クリニックブログ

2020.06.152024.04.01

【うつ病の原因について】海馬における神経新生の抑制・萎縮/脳神経接続と構造の改変とは

うつ病の原因やメカニズムについて、当院の理事長 野村紀夫が取材を受け、つい先日の2020年6月13日にテレビ朝日のサタデーステーション、「ニュースのあや」で取り上げて頂きました。

今こそコロナうつにご用心!というテーマに即した内容で取り上げて頂きました

コロナ自粛や、コロナに伴う我々の生活様式の変化は大きなストレスを伴うものです。このようなストレスのせいで気が付かないうちに、交感神経や副交感神経のバランスを崩してしまうだけではなく、憂うつな気持ちやその後の生活にも大きく影響を及ぼしてしまいます。

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ストレスに関連した、うつ病の原因とは

また、うつ病は自律神経だけではなく、セロトニンやノルアドレナリン、コルチゾールなどのホルモンとも関係しています。

緊張状態が続くことで脳神経の接続や構造が変わってしまうことがうつ病の一因と考えられています

ホルモンなどの物質の変化が引き金になるとは思われますが、物質だけで説明がつくわけではありません。「うつ病ストッパーの役割の物質」があるのであれば、その物質を供給するだけでうつ病は改善するはずですが、現実はもっと複雑です。

モノアミン仮説について

モノアミン仮説、という1960年代の説明ではセロトニンが精神の安定や安心感に関係したり、ノルアドレナリンやセロトニンなどの神経伝達物質の機能低下が起きており、抑うつ症状や意欲低下などのうつ病状と関連しているという仮説が提唱され、抗うつ剤の開発につながりました。日光浴、運動、食事、睡眠、でセロトニンが増え、抗うつ効果を認めます。セロトニンを増やす抗うつ剤も効果的です。しかし、セロトニンを増やしても効果がない患者もいます。

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うつ病の原因】抗うつ薬を開始しても、実際の病状回復までには、タイムラグがあるという事

【うつ病の主な原因説】海馬の「神経新生の低下」や「萎縮」、「セロトニン受容体」や「下位の遺伝子レベル」での変化が原因ではないかといわれている

また、セロトニンが増えてから抗うつ効果が出現するまでには数週間のタイムラグがあり、単純にセロトニン=うつ病ストッパーではありません。最近は、セロトニンを増やす薬が脳の海馬の神経新生を促進するという報告があるだけではなく、セロトニン受容体の感受性に着目した説や、更にもっと下位の遺伝子発現レベルでの変化がうつ病の発現に関連しているのではないかとも報告があるなど、うつ病を改善させる機序として注目されています。

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慢性的なストレスから【うつ病発症】への機序について

また、最新のうつ病の脳科学的な機序を下記にまとめました。

【神経新生の減少や萎縮】ストレスホルモンの「コルチゾール」が脳神経へ与えるダメージとは

気を張り詰めていた状態=ストレスが続くと、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンcorticotropin-releasing hormone, CRHが過剰産生され、視床下部-下垂体-副腎皮質系の過剰な活動が引き起こされます。

そのため副腎皮質ホルモン(グルココルチコイド:コルチゾール)が過剰分泌され、神経発生の抑制および海馬の萎縮に代表される、様々な影響が神経回路に及ぼされます。実際に、うつ病の患者には、海馬の萎縮や神経新生が減少していると報告されています。

【神経新生の減少や萎縮】それ以外にも脳神経の構造の変化や接続へも大きく影響を与える

このように、一部の患者ではうつ病の発症に先行して海馬の体積の減少がおきるという証拠(海馬の萎縮)があります。その他、うつ病の原因なのか結果なのかはまだわかりませんが、海馬、島、および前帯状皮質の灰白質の減少、扁桃体と海馬を前頭前野とつなぐ鉤状筋束の異常、後頭皮質の特定のγ-アミノ酪酸(GABA)ニューロンの密度の減少、前頭前皮質、特に眼窩前頭前皮質、背外側前頭前皮質、扁桃体、および前帯状皮質のグリア細胞の密度と数の減少が見られます。脳神経のネットワーク接続にも異常が見られます。

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脳神経接続の変化により、判断や感情、意欲への影響が出てしまう

ネットワーク内の過剰接続がみられ、これにより自己批判的になる可能性があります。前頭頭頂葉ネットワーク内の接続低下があり、これにより反すうや内的思考への抑うつバイアスにつながる可能性があります。また、異なるネットワーク間の異常な接続も認めます。

脳はこのようにストレスホルモンにとても脆弱なために、ストレスが長期化することで記憶や学習に関わる海馬の萎縮や、不安や情動のコントロールを行う扁桃体の働きを崩し、食行動や睡眠などの行動や情動のコントロールを崩して抑制してしまうといったうつ症状へと関連しやすいとも言われています。

【うつ病のストレス耐性の低下とは】慢性的なストレスが、更にコルチゾールの分泌を変化させてしまい、悪循環となる

また、長期のストレスや慢性的なストレスにさらされてしまうと、視床下部―下垂体―副腎皮質(HPA)系を通したコルチゾールの分泌のネガティブフィードバックが適切に働かず、コルチゾールなどの分泌も長期化してしまう変化が起きます。

長期的なストレスが、コルチゾールの分泌量そのもののコントロールをも崩してしまうために、更に脳神経系への影響を大きく増幅させてしまうのです(ストレス耐性の低下)。ですが、前述致しましたように、まだどのようにしてうつ病が脳神経や接続へこのような影響をしてしまうのかという詳細な機序についてははっきりとは分かっていません。

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一次的なストレスであれば、脳の回復・修復機能が働きやすい

上記がストレス脳科学的な反応といわれていますが、通常ストレスは日常生活でもゼロにできるものではなく、ストレス負荷がかかるとコルチゾールなどのホルモンが放出されて、ストレスに対処しようとします。一時的なストレス負荷であれば、脳神経への負荷や構造の変化は回復しますし、分泌されたコルチゾールへのネガティブフィードバック機能も適切に働きコルチゾールの神経系への負荷を軽減させることができます。

不眠症や睡眠障害との関係】ノルアドレナリンやセロトニンの影響について

またノルアドレナリンやセロトニンなどのホルモンは睡眠のリズムにも関連があると言われており、不眠とも関わりが深いことが特徴です

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熟睡と覚醒のバランスに影響している

特に、うつ病と関連が高いと言われているセロトニンは睡眠の熟睡感にも繋がる徐波睡眠やレム睡眠などの睡眠と覚醒の調整にも関わり、「睡眠」という私たちの活動や行動によってもたらされる疲労からの回復や休息、生体機能の維持・調整を担う、私たちにとって大切な睡眠作用を調整する作用もあるのです。

またノルアドレナリンも脳の覚醒水準に影響を及ぼしており、睡眠-覚醒リズムの調整を担っている。またメラトニンは日中濃度が低いが夜間に血中濃度が上がり、体内時計を構成しています。またメラトニンはトリプトファン、セロトニンを経てメラトニンに至るのですが、光の刺激を受けることでその生成が抑制されることも示されています。

【うつ病と不眠症の合併について】睡眠とうつ病の関係性は大きい

また、睡眠とうつ病の関係性は大きく、うつ病の多くの方達が何らかの睡眠障害を持っています。うつ病治療において、積極的な不眠治療を合わせることは、うつ病症状の改善にもつながることが報告されており(Fava et al,2011;2006)、不眠症状がうつ病の再発リスクとしてだけではなく、不眠症状そのものが、うつ病のリスクファクターとしても報告されています。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など