クリニックブログ

2019.11.072024.03.30

ナルコレプシーを知っていますか

ナルコレプシー

日中の眠気は睡眠不足のせいではない?!

「毎日のように昼間に眠気を感じている」という症状でお悩みではありませんか?

日本人の成人の4.1%にこの症状があるという調査結果もあります。このような日中の過度の眠気には、大きく分けてふたつの原因が考えられます。まず、睡眠時間が短かったり熟睡できていないことによる睡眠不足があり、これには「睡眠不足症候群」、「睡眠時無呼吸症候群」などが含まれます。次に夜はよく眠れるにもかかわらず昼間に眠くなってしまうのであれば、過眠症という病気が考えられます。
また倦怠感に伴う症状として、日中の眠気を呈している患者様もみえます。

過眠症にもいろいろありますが、代表的なものにナルコレプシーがあります。ナルコレプシーにかかる人は2000~4000人に1人の割合といわれています。また、原因不明の過眠症としては突発性過眠症があります。
ナルコレプシーは古くから研究されている疾患ですが、みなさんにはなじみがうすい病気であるかもしれません。ナルコレプシーとはどんな病気なのか、検査や治療法などについてご紹介します。

ナルコレプシーとはこのような病気です

次の症状がよくみられます。

●昼間の強い眠気・睡眠発作

会話中、食事中、歩行中、仕事中、運転中などのような、通常では眠らない状況で居眠りが起こってしまい、生活に支障をきたします。このような昼間の強い眠気は、ナルコレプシーの患者さんすべてに生じます。このように、急に耐えがたい眠気に襲われて眠り込んでしまう症状を「睡眠発作」と呼ぶこともあります。30分以下の短い仮眠をとるとスッキリして、この眠気がしばらくの間なくなるのが特徴です。

●情動脱力発作(カタプレキシー)

笑った時、得意になった時、冗談を言った時、感動した時、驚いた時、怒った時などに感情の動き(情動)が引き金になって急に全身の力が抜ける発作が起こることがあります。急に膝の力が抜けて立っていられなくなったり、手に握っているものを落としたり、顔がゆるんで口がもつれ、しゃべりにくくなったりします。

ただし、意識を失うことはなく、この症状は数秒から2~3分で治ります。 こうした症状を「情動脱力発作」といい、ナルコレプシーの診断の重要な決め手となりますが、すべての患者さんにみられるわけではありません。

●入眠時幻覚と睡眠麻痺

「入眠時幻覚」とは、「人や動物がそばにいる、体に触れる」と感じたり、「体が空中に浮く」といったような鮮明で現実感のある夢を寝入りばなに見ることを言います。一方、「睡眠麻痺」とはいわゆる「金縛り」の状態のことで、半分目が覚めているのに声が出ず、体も動かせず、不安感・恐怖感が生じる症状を言います。
睡眠麻痺は入眠時幻覚に伴うことが多いのです。ナルコレプシーの患者さんでは睡眠麻痺と入眠時幻覚が頻繁に起こります。健康な人でも約40%の人がこれらの症状を体験していますが、起こる回数はごく少ないのです。

●その他

上記のほか、夜間に何度も目が覚める(夜間睡眠分断)、眠りながら行動しているが、眠っている自覚がなく、自分がしたことを覚えていない(睡眠自動症)、ものが二重に見える(複視)、頭痛、集中力の低下、記憶障害などが報告されています。

昼間と夜間のリズムとは

健康な人では、昼間は目が覚めている状態、夜間は眠っている状態がそれぞれ長時間にわたって維持されています。ところが、ナルコレプシーでは、昼間は目が覚めている状態を長く維持できないので、強い眠気に襲われたり睡眠発作が現れたりします。夜は睡眠を長時間維持できないため、夜間睡眠分断が起こりやすいのです。
ナルコレプシーの発症に男女差はありません。発症年齢は5歳以降で、15~25歳での発症が多くみられます。

ナルコレプシーの症状の程度は発症後大きくは変わりませんが、長期的には入眠時幻覚と睡眠麻痺は比較的早くなくなり、昼間の眠気と情動脱力発作も加齢とともにしだいに軽くなる傾向がみられます。

ナルコレプシーとレム睡眠

睡眠には、「レム睡眠(眠りは浅いが、筋肉の緊張が抜け、夢を見る睡眠)」とそれ以外の「ノンレム睡眠(脳を休める睡眠)」があり、睡眠中はこのふたつの睡眠が交互に現れます。

ナルコレプシーでは、レム睡眠に異常がみられ、このことが入眠時幻覚や睡眠麻痺と関連しています。

レム睡眠の異常とは、睡眠中であるのに脳の活動レベルだけが高いというもので、このために現実感のある鮮明な夢を見たり、目は覚めているのに体を動かせないという症状が生じます。これが入眠時幻覚や睡眠麻痺です。これとは逆に、起きているにもかかわらずレム睡眠の脱力だけが現れてしまうという症状が「情動脱力発」なのです。これら睡眠麻痺、入眠時幻覚、情動脱力発作は「レム睡眠関連症状」と呼ばれています。さらに、ナルコレプシーでは夢が行動となって現れ、睡眠中に大声で叫んだり、手足をバタバタさせるという「レム睡眠行動異常(レム睡眠行動障害)」がみられることがあります。

また、ナルコレプシーではレム睡眠が現れる時期にも異常がみられます。健康な人ではレム睡眠は眠ってから90分以上経たないと現れませんが、ナルコレプシーでは入眠直後(15分以内)に現れるのが大きな特徴です。入眠時幻覚や睡眠麻痺が寝入りばなに起こるのはこのためです。

ナルコレプシーの診断のために、どのような検査をするのでしょうか?

終夜睡眠ポリグラフ検査(終夜PSG:ポリソムノグラフィー)
夜間の就寝時に耳や頭に電極を付けて、脳波、呼吸状態、下肢の運動、睡眠姿勢、心電図など約10種類の生理機能を同時連続的に一晩中記録する検査です。この検査ににより「睡眠時無呼吸症候群」や「周産期四肢運動障害」などの睡眠障害の診断ができるので、昼間の眠気の原因が夜間の睡眠障害なのか、それ以外の原因によるものなのかを調べるために行います

ナルコレプシーの治療法は?

ナルコレプシーを根治する治療法はまだ開発されていません。治療は症状を抑えることが中心になりますが、薬を飲むことにより症状が十分に改善されます。症状の種類と重さ、職業や生活パターンを良く踏まえたうえで、薬を飲む時間を工夫することが重要です。また、使用する薬の量は、日常生活への支障をなくす必要最低限にしなくてはなりません。

昼間の過度の眠気に対しては、覚醒を促進し眠気を抑える薬を使用します(モディオダールなど)。これにより夜間睡眠分断の改善も期待できます。情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺などのレム睡眠関連症状に対しては、レム睡眠抑制作用のある「抗うつ薬」が有効です。

夜間睡眠分断が著しい場合には、「睡眠薬」または催眠作用がある「抗不安薬」を少量使用します。なお、ナルコレプシーでは、長期間服用したために薬の効き目が悪くなって量を増やさなければならなくなるという心配はほとんどありません。

昼間に強い眠気が生じた時は、30分間以下の短い仮眠をとると爽快感が得られしばらくは眠気が治まります。眠気が強くて困るときは、可能ならば、5分でも10分でもうたたね(仮眠)をすることです。これにより薬の使用量を減らすことができます。
睡眠不足だったり睡眠の質が悪かったりすると昼間の眠気が強くなりますので、規則正しい生活を心がけ、質の高い睡眠をとるための睡眠衛生に注意することも必要です。

治療により症状が緩和したり改善します

ナルコレプシーなどの過眠症については、まだ一般的に良く知られていないため、患者さん自身も病気であるという認識がなく、また周囲の人からは「怠け者」「やる気がない」などと見なされ、劣等感を抱いたり、失業したり、学業不振に陥ったりといったケースが多くみられます。

しかし、適切な診断と治療を受けさえすれば、普通の社会生活をほとんど支障なく送ることができるのです。ナルコレプシーと診断された患者さんに対しては、日中の過度の眠気を抑える薬が使用されています。ナルコレプシーの検査や治療は、睡眠医療専門施設、精神科・精神神経科や神経内科で受けることができます。自覚症状を感じたら、医師の診察を受けましょう。

名古屋市栄のメンタルクリニック,心療内科

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