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2021.06.042024.04.01

治療抵抗性うつ病の治療法

治療抵抗性うつ病の治療法

多くの場合、2、3ヶ月ほどしっかり休養を取りながら治療を受ければ、うつ病の症状はかなり軽くなります。しかし、なかには治療困難で転機不良のうつ病があります。そういった治療抵抗性うつ病はエビデンスのあるプロトコルに沿って治療しなければ、さらに転機不良になることが多いです。そのため、治療抵抗性うつ病の治療としてエビデンスのある薬剤を把握することが非常に大切です。

この記事では、治療抵抗性うつ病の第一選択と第二選択の治療法について解説します。

大うつ病性障害の薬物療法に関する検証型治療アルゴリズムSTAR*D

治療抵抗性うつ病に対する薬物療法の情報として、アメリカで2003年から実施された大うつ病性障害の薬物療法に関する検証型治療アルゴリズムSTAR*D(Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression)研究プロジェクトが参考になります。STAR*Dでは大うつ病性障害の外来患者さん2,876名を対象に薬物療法の治療効果に関する実践的研究が行われました。

第1ステージではcitalopramが14週間ほど投与され、それで寛解しなかった患者さんはそのまま研究が継続されて次の段階の治療を受けるといった流れで研究は行われました。治療ステージは第4ステージまででした。STAR*Dの結果、①治療抵抗性うつ病の治療では柔軟なアプローチが必要であること、②薬理学的観点や以前の治療の結果の観点からでは特定の治療に十分な治療効果があるかどうかは簡単には予測できないことが示されました。

心療内科ひだまりこころ栄院

治療抵抗性うつ病の第一選択の治療法

文献でその効果が支持されていて、実際に広く使われている治療抵抗性うつ病の第一選択の治療法としていくつかあります。そのなかで、NICEでも推奨されているものには以下があります。

リチウムの追加

リチウムの追加は、治療抵抗性うつ病の第一選択の治療法として確立されています。ただし、血漿中濃度が高くなると忍容性が低くなることがあるため、血漿中濃度のモニタリングやTFT、eGFRなどの検査を必ず定期的に行わなければなりません。

SSRIまたはベンラファキシンと、ミアンセリンあるいはミルタザピンの併用

忍容性は良好とされているけれども、理論的にはセロトニン症候群のリスクがあります。また、ミアンセリンと併用することで血液疾患のリスクが高まること、ミルタザピンと併用することで体重増加や鎮静が生じることがあるといった副作用を意識しておかなければなりません。

また、以下の薬剤についてもその効果は十分に研究されています。

クエチアピンをSSRIあるいはSNRIに追加

忍容性は良好であり、リチウムより有効性が高い可能性があるとする研究もあります。ただし、口渇や鎮静、便秘などの副作用や、長期使用による体重増加のリスクといった問題には注意しなければなりません。

アリピプラゾールを抗うつ薬に追加

忍容性や安全性が高いです。使用用量は2-20mg/日とされていますが、2-10mg/日の低用量でも効果が見られることもあります。ただし、10mg/日以上でアカシジアや不穏が見られることが多いです。また、不眠が生じることもあります。

オランザピンと、fluoxetineあるいはTCA(三環系抗うつ薬)の併用

忍容性は良好で、数多くの研究がなされてきましたが、アメリカ以外では限られた臨床経験しかない点には注意する必要があります。また、体重増加のリスクがあります。日本ではfluoxetine:フルオキセチンは未承認薬です。

SSRIとbupropion

STAR*Dではその治療効果が支持されています。ただ、NICEでは承認されておらず、イギリスではうつ病の治療薬として認められていません。

またbupropion:ブプロピオンは日本ではまだ使われていません。

治療抵抗性うつ病の第二選択の治療法

第一選択の治療法には多くのエビデンスがあるのに対し、第二選択の治療法はエビデンスによる裏付けがあまり多くありません。そのため、第一選択の治療法と比べると、第二選択の治療法はあまり使用されてないです。

そのなかでも非常によく研究されている、あるいは確立されている第二選択の治療法としては、以下があります。

ラモトリギンの追加

忍容性が高く、広く使用されています。ただし、適切な容量が不明であるため、薬剤の量は少しずつ増量していかなければなりません。また、皮疹が出ることもあります。

電気けいれん療法(ECT)

ECTの治療効果は文献で支持されており、治療法として確立されています。また、日本うつ病学会のガイドラインでも、薬物抵抗性や自殺の危険が迫っている場合などの治療法として修正型ECTがあげられています。ただし、治療を行うにあたって全身麻酔が必要であるなど、薬物療法と比べると多くの準備が必要です。

他の第二選択の治療法として、SSRIとburpirone:ブプロピオンの併用、高用量のベンラファキシン、抗うつ薬へのリスペリドンの追加などがあります。しかし、忍容性が低く治療法としてあまり用いられていない、あるいはエビデンスが限られているなどの問題があるため、本稿では詳しくは解説しません。またブプロピオンは日本では未承認のお薬です。

まとめ

うつ病は治療の公式なガイドラインがあり、治療の流れも明確になっていますが、原則通り治療してもなかなか治らない患者さんもいます。しかし、エビデンスのあるプロトコルに沿って治療しなければ、さらに転機不良になること恐れもあります。原則通りに治療を行っても、なかなか治りにくいうつ病もありますので、治療抵抗性うつ病に対する治療法の把握は非常に重要です。

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