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2021.05.312024.04.01

月経前不快気分障害・PMDDについて

月経前不快気分障害について

「生理前は、日常生活や仕事にまで支障が出てしまってしんどい」それはもしかすると『月経前不快気分障害』かもしれません。

女性ならば一度は『月経前症候群(PMS:ピーエムエス)』という言葉を耳にしたことがあるかと思います。生理のおよそ二週間前頃から、精神面や身体面が不安定になってしまう状態です。

そのPMSの中でも抑うつ状態や不安、イライラするなどの情緒不安定さや、興味や集中力の減退が極端に強く表れる状態を『月経前不快気分障害(PMDD:ピーエムディーディー)』と呼びます。

月経前不快気分障害・PMDDに関する報告についてご紹介

PMSだけではなく、月経前不快気分障害・PMDDの頻度も決して低くはない

多くの女性が月経前に何らかの身体的・精神的変調を感じており,月経前症候群といわれている。また,月経前症候群の重症型ともいえる月経前不快気分障害も3~8%の女性にみられるといわれています。(出典:月経前症候群・月経前不快気分障害の病態と治療戦略/大坪 天平)

月経前不快気分障害はメンタル面への影響も大きく、人間関係等にも影響をしてしまう事も

月経前の黄体期に精神症状(抑うつ、不安、焦燥など)や身体症状(易疲労感、浮腫、乳房圧痛など)を発現し、月経開始と共にそれらの症状が減退ないし消失するものを月経前症候群(premenstrual syndrome: PMS)と呼ぶ。さらに重度の PMS には、著しい抑うつ気分、不安などの精神症状を示し、日常生活や対人関係に大きな支障をきたす者もおり、PMS の重症型として月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder: PMDD)という疾患概念が提唱されている。(出典:月経前症候群、月経前不快気分障害の女性の臨床的特徴とストレス・コーピングについて/秋元世志枝)

このように医学的にも定義がなされている月経前不快気分障害ですが、私たちの日常に照らし合わせて話を進めて行きましょう。

月経・生理前にこのような症状はありませんか?

生理前になると…

  • ・悲しみや絶望感があり、ひどいときには死にたいと思うことがある
  • ・緊張感や不安感がつきまとう
  • ・電車の中などで、パニック発作を起こしてしまう
  • ・焦燥感や動揺があり、時には涙が出ることもある
  • ・イライラや怒りが強く、他人と衝突してしまいがちになる
  • ・いつもならできる作業が、集中力が低下してできない
  • ・常に疲れている感じがする
  • ・食欲が出て止まらない
  • ・寝過ぎてしまう、または眠れない
  • ・自分で自分自身をコントロールできない感覚
  • ・胸や頭が痛くなる

これらにいくつも当てはまる方は『月経前不快気分障害(PMDD)』かもしれません。

月経前不快気分障害に関連した症状について解説

月経前不快気分障害・PMDDを疑う点は、”生理に応じて繰り返す”

『月経前不快気分障害(PMDD)』というのは一言でいえば、PMSの中でも精神面にトラブルが重く生じて日常生活に支障をきたしてしまうものをいいます。

生理の開始前に耐えられないほどの強さの気分の不安定さや苛立ち、憂うつさ、不安などが出てしまう。そして生理開始後数日でそれらが良くなるという方は、PMDDの可能性が考えられます。

では、このPMDDはどうして起こるのでしょうか。

PMDD・月経前不快気分障害の原因について

ホルモンの変化に伴う影響も

排卵周期は、視床下部─下垂体─卵巣系のホルモンのフィードバック機構により形成される。PMS、PMDD はこの排卵周期性に伴って出現、消失するため、内分泌系の変化が発症に関連している。しかし、ホルモン以外にも複合的な原因が発症に関与し、心理・社会的要因との関連も示唆されている。(出典:月経前症候群、月経前不快気分障害の女性の臨床的特徴とストレス・コーピングについて/秋元世志枝)

月経周期と関連する疾患であることからプロゲステロン、アロプレグナノロン、エストロゲンなどの性ホルモンとの関連が想定 8,9されているが、病態は明らかにされていない。また、遺伝や、ストレスなどの心理社会的因子の関わりも示唆されている。(出典:月経前不快気分障害症状に対する心理社会学的因子の影響/若槻, 百美)

実はストレスも大きく関係

PMDDの原因は、単純にホルモンだけの問題ではないようです。また明らかにされてはいませんが、その方の心の状態や社会的なストレスなども原因になっていると言われています。

ストレス原因を踏まえた、PMDDの対処法にも

では、PMDDの方が日常生活で行える対処法にはどのようなものがあるのでしょうか。PMDD の者にとっては、ストレスフルな出来事をポジティブに再解釈する対処方略をとることが、月経前症状の軽減に繋がる可能性が示唆された。(出典:月経前症候群、月経前不快気分障害の女性の臨床的特徴とストレス・コーピングについて/秋元世志枝)

つまり何か嫌なことがあったときでも、前向きに考えなおすことがPMDDを軽くするかもしれない、というのです。

マイナスな出来事があったときにクヨクヨする癖はありませんか?そんなとき「でも違う視点から考えれば~だよね」とポジティブに捉えることができれば、PMDDの軽減に繋がるかも知れません。

PMDD・月経前不快気分障害が疑われる時には「何科」と受診したらよいのでしょうか?

もし「私はPMDDかも?」と思って治療をしたいと考えたとき、何科の病院を受診したら良いのでしょうか。

まずはインターネットでPMDDに詳しい心療内科や精神科を探すのが近道です。病院のホームページにはどのような場合に受診した方が良いのか、またその病院で行われる治療法などが記されている場合も多いので、受診の目安を知ることにも役立ちます。

心療内科や精神科以外だとPMDD専門外来を利用するのも手です。こちらはPMDDを専門に扱っているのでPMDDへの理解度も期待できます。まだ数そのものが少ないのが難点でしょうか。

心療内科ひだまりこころ栄院

どんな治療を提供しているの?

病院では月経前不快気分障害に対して、安全性の高いSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬が処方されることがあります。抗うつ薬というと抵抗のある方がいるかもしれませんが、SSRIは強迫性障害やパニック障害などにも用いられる薬です。SSRIは脳内でセロトニンと呼ばれる物質の働きを強めて、憂鬱な気分を改善したり意欲を高めたりしてくれる作用があります。

また病院では低用量ピルを用いる場合もあります。ピルといえば避妊するために女性が飲むための薬、という意識をお持ちの方もおられるかもしれません。しかし生理周期を整えることにより、PMSやPMDDが軽減するという可能性もあります。

低用量ピルは、毎日一定時間に飲むことで効果を示すタイプの薬です。低用量ピルをやめたら妊娠できるのか?という部分も気になるところですが、妊娠をしたいと思ったときには、低用量ピルの服用をやめれば排卵などの機能が回復し、問題なく妊娠ができると考えられています。

その理由から、将来的には妊娠を予定しているが今はPMSやPMDD治療のために低用量ピルを利用したいと考えている方でも使える薬といえるでしょう。その他にも漢方薬が出されることもあります

薬での治療と同時にPMDDとの上手な付き合い方を教えてくれることもあるため、PMDDに詳しい病院や医師との出会いが重要になってきます。

◆まとめ◆

多くの女性が生理についての悩みを持っていると言われますが、その悩みは個人差が非常に大きい物なので、なかなか理解されない状況も見られます。体についてのデリケートな話題である為に、友人や親子の間でも辛さを伝えられずに耐えている方も多いのではないでしょうか。

周期的に訪れる体の反応という事もあり、時としてその警戒心が強いストレスになる事もあると思います。「誰もが持っている悩みだから自分だけが甘えてはいけない。」という考え方ではなく、辛い時には辛いと相談出来る状況を作る事が重要と考えます。

決して一人で悩まず、日常生活に支障を来たすような場合には医師に相談をしましょう。そして上手く自分自身の体と付き合っていけるようにしたいですね。

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