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2021.05.302024.04.01

認知症の身体症状に対するより安全な処方

認知症の身体症状に対するより安全な処方に関して

今回のテーマは「認知症の身体症状に対する処方」です。

高齢の患者さんは複数のお薬を服用していることが多く、処方には注意が必要です。なかでも認知症患者は、認知機能に対する薬剤の副作用を受けやすいため、安全な処方について知っておくことが大切になります。

今回は、認知症の患者さんへの使用が検討される薬剤とその評価について、さまざまな身体疾患ごとに整理しました。

尿失禁

  • ・オキシブチニン…認知機能悪化を伴うことが報告されています
  • ・トルテロジン…症例報告では、記憶喪失、幻覚、せん妄等の副作用が報告されています
  • ・ソリフェナシン…脳卒中患者を対象とした調査では、作業記憶を低下させることが示されていますが、短期的認知機能には影響はないと言われています
  • ・darrifenacin…健常高齢者を対象にした調査では、認知機能に作用するという結果は得られていません。ただし認知症を対象とした試験は行われていません。

尿閉

タロスロシン、alfuzosin、プラゾシン(α遮断薬)… α遮断薬の認知機能に対する作用の気泡文献はありませんが、傾倒、傾眠、浮動性めまい、抑うつといった副作用を引き起こすとの報告はあり、注意が必要です。

消化器諸症状

ロペラミド

認知機能に悪影響を及ぼすといわれる抗コリン作用をいくらか有するお薬ですが、認知症患者の認知機能を悪化させるということを示すデータはありません。ただし、他の効果リン薬と併用すると、認知機能への影響が生じる懸念が生じるため、注意が必要です

緩下薬

認知機能に悪影響を与えることを示すエビデンスはありません。むしろ、緩下薬により便秘を解消することは、認知症における行動・心理症状(BPSD)の悪化を防ぐ有益な処方のひとつです

シクリジン(制吐薬)

第一世代のヒスタミン拮抗薬で、認知能力を悪化させるおそれがあります

  • ・メトクロプラミド(制吐薬)…抗コリン作用はほとんどありませんが、運動障害が生じる可能性があるため、認知症患者にはきわめて慎重な投与が推奨されています
  • ・ドンペリドン(制吐薬)…高齢者においては、重篤な心臓機能への副作用のリスクがわずかに高まることが報告されています。心臓の基礎疾患や重度の肝機能疾患を持つ患者等への投与は禁忌となっており、投与量や投与期間についても上限を超えないよう細心の注意が必要です。
  • ・スコポラミン(鎮けい剤)…中枢に作用する抗コリン薬で、記憶や処理速度注意力を悪化させると言われます。こうした症状に加え、高齢者では低用量でも錯乱や幻覚が起こるため、使用は推奨されません。
  • ・alverine、mebeverine、ハッカ油(鎮けい剤)…認知機能に影響はないと考えられています。

認知症とお薬の関係について名古屋市金山の心療内科が解説

気管支拡張薬

  • ・β作動薬…副作用で振戦が見られるため、パーキンソン病を過剰治療しないよう注意が必要です
  • ・抗コリン性気管支拡張薬…吸入の抗コリン薬は経口薬に比べて副作用はほとんどないと言われています。高齢者においても、重大な認知機能障害とは関連しないと考えられます。
  • ・テオフィリン…重大な認知機能障害を起こすことはありませんが、副作用で悪心と嘔吐がよく見られます。投与患者の約半分にづ頭痛や抑うつといった神経学的副作用が起こることにも注意が必要です。

流涎

  • ・経口抗コリン薬全般…認知機能障害、せん妄、便秘といったリスクが高いため、高齢者への処方は避けるべきと言われています。

重症筋無力症

  • ・ドスチグミン、ネオスチグミン…認知機能への影響は少ないと考えられています。

鎮痛剤

  • ・非ステロイド性抗炎症薬及びアセトアミノフェミン…適量投与であれば、認知機能障害を起こす可能性は低いと言われています。
  • ・オピオイド…鎮静、せん妄、幻覚、妄想といった副作用に注意が必要です。
  • ・抗ヒスタミン薬…認知機能に望ましくない副作用を引き起こす恐れがあります。

高血圧

  • ・降圧薬…薬剤クラスにかかわらず、高血圧の治療は認知機能全般に良い影響を与えるとの報告があり、安全性も認められています。

心疾患

  • ・ジゴキシン…急性錯乱状態との関連が指摘されているほか、悪夢の報告もなされています。

その他

  • ・抗生物質…せん妄との関連が報告された例もありますが、必ずしも認知機能障害を引き起こすということではありません。必要な場合は感染症治療を優先し処方を検討すべきでしょう。

今回は、認知症の身体症状に対する処方についての情報をご紹介しました。

参考資料:

David M. Taylor, Thomas R.E. Barnes, Allan H Young著(2019)『モーズレイ処方ガイドライン 第13版 日本語版』ワイリー・パブリッシング・ジャパン株式会社

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