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2021.01.162024.04.01

月経前不快気分障害(PMDD)

月経前に関連した心身の不調は実は多いのです

月経前に突然気分が落ち込んだり、食欲が増えたり、心と身体に変化が起きたことはありませんか?月経に伴う何らかの症状があると自覚している人は、70~80%にのぼるともいわれています。

軽度であれば自分で対処できますが、我慢できないほどの症状に悩んでいる方は、「月経前不快気分障害(PMDD)」の可能性が考えられます。薬などの適切な治療で緩和することが可能です。

自分の身体のことを相談しにくいと感じるかもしれません。けれど、そんなデリートな内容だからこそ、正しい知識を知っておきたいですよね。月経前不快気分障害の症状や、治療法についてご紹介いたします。

月経前不快気分障害とは?

月経前の不調や生理痛は仕方のないもの、耐えるもの、と捉えて我慢している方も多いでしょう。月経前の不調を表す「月経前症候群(PMS)」という言葉は一般的に使われるようになりました。

月経に伴う辛い症状は改善できるものだという認識も広がってきています。けれど、月経前不快気分障害の認知度はまだそれほど高くないのが現状です。

当事者である女性ですら、知識が乏しく、辛いけれど解決の方法がわからないという状況で苦しんでいる場合もあります。知るということが、まずは解決の第一歩です。さまざまな方法で症状を軽減することができるため、もし悩んでいるなら、決して無理しないようにしてくださいね。

月経前症候群と月経前不快気分障害

月経前症候群(PMS)は「月経前の3~10日の間に続く精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減弱あるいは消失するもをいう」と日本産婦人科学会婦人科用語集により定義されています。

月経前不快気分障害(PMDD)とは、月経前症候群の中でも、精神の不安定さが際立つ重症な状態を指しています。感情のコントロールが難しくなり、気分が落ちたり、理由もなく涙が出たり、自分では止められない感情に襲われてしまいます。

2013年に米国精神医学会が作成した診断基準で(DSM-5)精神障害と認められ、正式な病名として認知されるようになりました。月経前症候群よりも現れる症状の数が多く、影響も大きいとされています。

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月経前不快気分障害の割合

月経前の症状を自覚している女性のパーセンテージは、米国の精神障害診断基準マニュアル「DSM-IV-TR: American Psychiatric Association」に記載されています。

その報告によると、月経のある女性のうち、PMDDの12ヶ月有病率は1.8~5.8%であると示されているのです。全体の5%に当たる方が、月経前不快気分障害であるとすれば、多くの女性が月経前の不調を感じているといえます。

あまり知られていませんが、月経前不快気分障害は意外と身近な病気なのです。

月経前気分障害の症状

月経前症候群(PMS)は、月経が始まる前の数日から10日間くらいの間で、心身ともに不調を感じるようになります。月経前不快気分障害(PMDD)も、月経前症候群(PMS)の1種として含まれているため基本的な症状は同じです。

けれど、それよりもさらにひどい症状が現れ、人間関係や、職場・学校での社会生活に影響を及ぼすような状態に陥りやすいとされています。

月経が始まると徐々に緩和され、終わりに向かうとともに症状は完全になくなるのが特徴です。ですが、このサイクルはやがて身体的にも精神的にも影響することになり、コントロールすることが困難になります。

身体面

  • 倦怠感や疲労感
  • 胸が張る
  • 身体のむくみ
  • 不眠・過眠
  • 拒食・過食
  • 腰痛・頭痛

感情面

  • 抑うつ気分
  • 突然悲しくなる
  • 涙もろくなる
  • イライラして怒りっぽい
  • 不安・緊張
  • 意欲の低下
  • 集中力の欠如

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原因は判明していない

月経のある人の中で、月経前不快気分障害の有病率は3~5%に及ぶにもかかわらず、原因は特定されていません。女性ホルモンが変動する期間であるため、その変動と症状に関係性があると推定されているのが現状です。

排卵から月経までに黄体ホルモン(プロゲステロン)と、卵胞ホルモン(エストロゲン)が多く分泌されます。これらのホルモンが急激に低下し、神経伝達物質の異常を引き起こすことが原因のひとつだともいわれています。

DSM-5の診断基準

月経前に何らかの不調を感じ、生活に支障が出ている場合は医師に相談してみましょう。月経前不快気分障害の診断基準は米国精神医学会により、DSM-5において細かく定められています。心療内科と精神科で治療が可能ですが、まずは婦人科に相談へ訪れても大丈夫です。

月経前不快気分障害であるかどうかという診断は、月経周期と詳しい症状の変化の記録が必要になります。毎日、記録をつけることで、出現症状と月経周期との関連の確認が可能です。うつ病や他の精神疾患でないかということも慎重に判断されます。

治療方法

治療には、薬物療法と非薬物療法のどちらも提唱されています。生活の改善や運動などの方法で解決できない場合は、精神療法、漢方薬、抗うつ薬のひとつであるSSRIを用いた薬物療法などを行うことが可能です。

自分の症状を理解し、正しい認識を持つだけで、症状が軽くなることもあるので、気になる方は受診してみましょう。

精神療法

体調が優れないために、気持ちが落ち込み周囲とのコミュニケーションにも影響を及ぼす場合があります。コントロールできない状況に陥ると、自己否定感が強まり、さらに精神的に追い詰めらられてしまうことにも繋がる危険性があるのです。

そのような精神状態から抜け出すために、医師との通院での治療を通しながら、認知の修正を行ったり自己肯定感を強めたり、ストレスを整理していき解決に繋げていけるように働きかけていきます。

漢方薬

漢方医学では生理に伴い症状が起こることは、血の異常を示していると捉えられています。比較的軽症な月経前症候群(PMS)の場合は、漢方薬を処方されケースもありますが、月経前不快気分障害(PMDD)は漢方のみで改善することは難しいとされています。個人差があるため、医師に相談しましょう。

薬物療法・SSRI

うつ病治療薬の一種であるSSRIは脳内のセロトニン系に作用するため、治療に効果があると報告されています。現在、日本で使われているSSRIは以下の4種類です。

  • ・塩酸セルトラリン
  • ・フルボキサミンマレイン酸塩
  • ・パロキセチン塩酸塩水和物
  • ・エスシタロプラメシュウ酸塩

月経前不快気分障害においては、月経周期に合わせて排卵のあとから月経が終わるまでの間に服用する間欠療法が取られます。まれに副作用が出ることがあり、少量ずつ処方されることが一般的です。

薬を服用することに抵抗がある場合や、不安な点は医師に相談しながら、少しでも安心して治療に臨みましょう。

ひとり苦しまずに相談を

月経による痛みや、落ち込みは個人差が激しく、なかなか理解されないことも多いのが実情です。学校や仕事へ行けないほど、痛みや心の落ち込みがあっても周囲の配慮がないと、とても辛いですよね。

その症状を我慢するのではなく、適切な治療を行い症状を緩和することで、あなた自身が楽になり過ごしやすくなる可能性もあります。

月経前不快気分障害は一時的に症状を緩和できたとしても、治療がすぐに終わるわけではないのです。治療期間に何年も必要となる場合もあります。そのため、改善を急いだり、焦ったりせずにのんびりとストレスを溜め込まないように意識することも大切です。ひとりで頑張ろうとせずに誰かに相談してくださいね。

参考文献リスト

American Psychiatric Association:Diagnostic and statistical manual of mental disorders, 5th edition. Arlington, VA:Am Psychiatric Publishing, 2013. 日本精神神経学会(監),髙橋三郎ほか(訳).月経 前不快気分障害.DSM-5 精神疾患の診断・統計マ ニュアル.東京:医学書院;171-174,2014

日本産科婦人科学会.産科婦人科用語集・用語解説集.東京,金原出版, 2008,157

日本精神神経学会(日本語版用語監修),高橋三郎・大野裕(監訳):DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル,医学書院、2014

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