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2019.11.012024.04.01
青年期のADHDとは
現在、大人のADHD、大人の発達障害が注目されています。
従来、小児を中心に診断されると考えられていたADHD(注意欠陥・多動性障害)。近年、成人でも多く確認されるようになり、その適切な診断を求めるニーズが高まっています。
どうして大人の発達障害が注目されてきているのでしょうか?
就労環境の変化などで成人期ADHDが顕在化
ADHDの病型は、衝動的な行動や落ち着きのなさが目立つ“多動性・衝動性優勢型”、集中力がなく、注意散漫で忘れっぽい傾向が強い“不注意優勢型”、両者が同程度目立つ“混合型”の3つに大きく分類されます。
これらのうち、“多動性・衝動性優勢型”の患者は小学校などの集団生活で顕在化しやすいため、早期にADHDと診断され、適切な治療や対処が講じられる機会が多いとされています。一方、“不注意優勢型”の患者さんは集団生活で目立たないことから、小児期にはあまり問題視されず、見逃されがちであるといわれています。
近年、成人期ADHD患者に注目が集まっている理由は、「社会情勢の変化に伴い、以前より業務内容や人間関係が複雑化してきているため症状が顕在化しやすい為である」と指摘されています。
「数年前と比較して、多くの企業で細心の注意や集中力、配慮を要する業務をこなし、上司、同僚、部下との人間関係を構築する必要性が高まっており、“不注意優勢型”の患者が困難を抱えやすくなっている」と説明されています。なお、調査によって多少のばらつきがあるものの、成人期ADHDの患者の有病率は人口の約2~5%と推定されています。
大人の発達障害かもと思った時にはどのようにしたらよいのでしょうか?
患者および家族などから小児期~現在の問題を聞く
成人期ADHDを想定した質問では、現状の問題に加え、小児期に抱えていた問題や周囲からどのような印象を持たれていたかを聞き取ることが重要です。
その際、患者さんから「物事を計画的に進められない」「整理整頓や掃除、スケジュール管理などが不得手である」といった発言があれば、ADHDの特性を示している可能性を考える。患者さんと同居している家族からの情報も有用であるといわれています。
ADHDの程度を客観的に評価できるチェックリスト {Conners`Adult ADHD Rating Scales(CAARS)成人期ADHD自己記入式チェックリストなど)も診断の助けになります。ADHDの診断基準としては、米国精神医学会(APA)の「精神疾患の分類と診断の手引き第5版(DSM-5)が一般的ですが、発症年齢がDSM-4以前の7歳から12歳に引き上げられるなど、より成人期ADHDが認められやすくなっているといいます。
ADHDや発達障害による衝動性が多数の併存疾患を引き起こしていた可能性もあるのです
大人の発達障害やADHDだと診断されることで、問題行動と捉えがちだった症状が理解できるように
ADHDの特性により、周囲とのあつれきから自尊心や自己肯定感を持ちにくく、うつ病や双極性障害、不安障害を併発する場合も少なくありません。しかし、プライマリケアにおいてADHDと併存疾患を鑑別するのは容易ではなく、ADHD患者の70%程度は紹介元で異なる診断がなされているといわれています。その一因としてADHDの有する衝動性が挙げられるとし、「過食症や窃盗癖、リストカット、ギャンブル依存、インターネット依存」などには衝動性が関与しています。
これらの患者さんを診察する際は、「根本原因にADHDが存在する可能性を考慮すべきである」と強調しています。
ADHDや大人の発達障害の治療に関して
即効性や効果持続時間などを勘案し薬剤選択
現在、ADHDに対する薬物療法として、中枢刺激薬のメチルフェニデート(商品名コンサータ)と非中枢系刺激薬のアトモキセチン(商品名ストラテラ)が使用可能です。
即効性があるのは前者で、早ければ服用当日に薬効が実感できるが、後者では薬効が現れるまで2週間以上かかるとされています。一方、効果の持続時間は前者で約12時間、後者では継続的な効果が得られます。
両者の有効性に関して、「比較的早く効果を得たい場合はメチルフェニデート、シフト勤務者のように夜間でも効果を持続させたい場合はアトモキセチンを選択すると良い。どちらか単剤で十分な治療効果を得られない場合は、併用療法も考慮する」を助言されています。
なお、既に小児期ADHDに対して保健適応されている非中枢刺激薬のグアンフェシン(商品名インチュニブ)は、成人期ADHDに対する保険適応が追加申請されています(2018年8月現在)。グアンファシンについて、「同じ非中枢刺激薬であるアトモキセチンよりも効果発現が速く、ガイドライン(Canadian ADHD Practice Guidelines2011)によると、従来薬と異なり食欲低下や体重減少の有害事象が見られない点は着目すべきである」と解説されています。しかし、今後の知見の蓄積が待たれます。
”自分の特性”を基に取り組む治療や、グループ療法も有効です
他者と情報を共有したり、アドバイスをもらいながら行動訓練をすることは非常に重要です
“患者の特性”をもとに取り組む治療
成人期ADHDの非薬物療法としては、患者の特性を基に取り組む治療があります。この治療に含まれるのは、環境調整や心理教育、認知行動療法などです。具体的には、環境調整では患者さんの周囲に疾患への理解を求め、生活、職場環境の改善を行います。
外来教育ではADHDによる種々の障害や患者さんへの影響について認識を深め、自己理解や自己肯定感の回復を促すことを目的としています。認知行動療法では、ADHDに関連する行動と認知に着目し、それらに起因する問題を合理的に解決する方策の習得を目指すとしています。
これらの治療は、外来だけではなく、患者同士で意見を交換しながら進めるグループ療法の形式でもできるといわれています。
”患者同士”ならではの効果が得られるグループ療法
グループ療法では、1回3時間のプログラム計12回を1セットとし、ADHDの特性とされる「不注意」「多動性」「衝動性」などのテーマを絞ってディスカッションを行います。例えば、「不注意」をテーマにしたプログラムでは、「レポートの期日をすぐに忘れてしまう」という困りごとを発表し、それについて患者さん同士が話し合い、対応策を提案するといいます。
「グループ療法では、共感を得られる、孤独感が低減する、自尊感情が充足する、自己理解が深まる、疾患への新たな対処法が見つかるなどの効果が期待できす。これらは医師から得られない場合もある」と指摘されています。
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