PMDD（月経前不快気分障害）とは?【症状・原因編】

PMDD（月経前不快気分障害）とは？

多くの女性が感じる、生理前の身体の不調・こころの不調といった変化、月経前症候群（PMS：Premenstrual Syndrome）はすでに紹介しましたが、PMSのなかでもとりわけ精神的不調の程度が重く、日常生活に支障をきたすほどの状態は月経前不快気分障害（PMDD：Premenstrual Dysphoric Disorder）と言います。特にPMDDはDSM-5 では抑うつ障害群にカテゴリーされています。

PMSの症状と同様に、PMDDの症状もは生理の数日～2週間前頃から始まり、月経が始まると、ほとんどが嘘のように消えていったり、改善傾向を認めます

PMDDの原因とは？

実のところ、PMDD（月経前症候群）の原因は、はっきりとは分かっていません。生理周期によっておこる正常なホルモンバランスの変化に、敏感に身体や精神面が変化して、異常に反応して強い症状を呈してしまうことによるといわれます。

ホルモンのバランスが変化すると、セロトニン不足になることがあります。セロトニンとは、脳や腸に存在する物質で、血管を収縮させたり、気分に影響を及ぼしたり、また、からだにさまざまな症状をもたらしたりするものです。

PMDDを引き起こすリスクは？

月経のある女性は、だれもがPMDDになる可能性があります。しかし、よりリスクが高いと言われるのが、ご自身や家族の病歴がある場合です。

【リスク１】PMSやPMDDの症状がある家族がいる/いた

【リスク２】自身や家族が、うつ病、産後うつ、その他の気分障害になったことがある

そのほかにも、喫煙などがリスクとしてあげられます。

もちろん、PMS・PMDD・うつに関連した病気を持ったご家族がいたり、ご自身にうつ病の経験があったりしても、PMSやPMDDの症状は全くない、というケースもあります。

少しでも気になられたら、病院やクリニックにご相談してみてください。

PMDDの症状はどんなもの？

PMDDの症状は、月経の２週間前より後にあらわれ、月経がはじまると数日で消えます。これらの症状によって、なんでもない日々の生活ができなくなってしまいます。PMDDの症状があまりにも強いと、家庭で、職場で、またあらゆる対人関係において、うまく機能することができなくなってしまいます。これらはPMDDでない時期にはない、明らかに異なる変化です。

PMDDの症状として多いものを見ていきましょう。

PMDDの症状には、大きく分けて、【こころの症状】、【からだの症状】の二つがあります。

それでは、それぞれ見ていきましょう。

PMDDの【こころの症状】

イライラ

緊張

感情の制御ができない

興奮

怒り

身体症状

集中力の低下

憂うつ感

ひどい疲労感

不安

頭が混乱する

物忘れ

ネガティブな自己イメージ

妄想

感情が過敏になる

泣き出す

気分の上下

不眠・眠さや眠気

PMDD【からだの症状】

目の症状

視覚の変化

眼の感染症

皮膚の症状

ニキビ

かゆみによる炎症

ヘルペスなどの他の皮膚病の悪化

神経・血管の症状

頭痛

めまい

たちくらみ

手足の感覚の鈍さ

手足の感覚過敏

あざができやすい

動悸

筋肉の緊張

呼吸器の症状

アレルギー

感染症

胃腸の症状

腹部の痛み

むくみ

便秘

下痢

吐き気

嘔吐

骨盤の重み・痛み

腰痛

体液の滞留

足首・手足のむくみ

体重の増加

尿量の減少

胸の張りと痛み

その他の症状

運動失調

生理痛

性欲の減少

食欲の変化

過食

火照り・のぼせ

PMDDの症状は、他の病気の症状と類似しています。例えば、甲状腺に関する病気、うつ病、また不安障害の症状と似通っています。ですので、診断を受けるには、必ず医師による診察が必須となります。

また、PMDDは抑うつ障害群の一種ではありますが、経過を経てうつ病への変化や、パニック障害や不安障害への変化が認められることがありますので、注意が必要です。

クリニックや病院に相談・受診するタイミングは？

PMSは、月経期にある女性の４人に３人に現れるといわれるほど、まったく珍しいものではありません。しかし、その中でも、非常に症状が深刻であるPMDD（月経前不快気分障害）の診断を受ける女性は、あまり多くありません。

そのため、「わたしがお医者さんに相談してもいいの？」「他の人に比べると、そんなに症状は重くないのかも？」「月経に絡んだ症状で相談するなんて恥ずかしい」など、なかなかクリニックや病院に相談しにくいと感じていらっしゃる方が多くいらっしゃいます。

また、日本においてPMSやPMDDという言葉が世間に知られ始めたことが、わりと最近であることからも、「生理前、生理中の症状はガマンするもの！」と教えられた方や、そう考えておられる方も、よくいらっしゃいます。

しかし、PMS・PMDDをガマンすると、家庭や仕事、人間関係に様々な支障が出てきてしまうケースが多くあります。また、毎月繰り返す症状であるため、PMS・PMDDの症状が実際には、まだあらわれていなくても、生理の時期が近づくにつれて「またあの時期がくるんだ・・・」と不安や恐れを持ちながら生活しなければなりません。

【PMDDの症状が繰り返すこと】女性にとって、非常に大きなストレスとなり、こころの健康にもよくありません。

なかなか改善せず、症状の重いPMSやPMDDは、医師の治療が必要だと言えるでしょう。規則正しい生活、食事、睡眠などの生活スタイルを整えてみても、PMSが改善しなければ、ぜひ一度、産婦人科や精神科・心療内科に相談することをオススメします。

当院では、PMS・PMDDの患者様に対し、その症状や目的に合わせた治療をご提案させて頂いております。

一人で悩まず、少しでもお悩みのことがございましたら、ぜひ、当院までご相談ください。

PMDD（月経前不快気分障害）とは？【診断・治療編】についてはこちらから

参考文献

日本産科婦人科学会編．産科婦人科用語集・用語解説集．改訂第3版．東京: 日本産科婦人科学会事務局; 2013.

Johns Hopkins Medicine HP, Premenstrual Syndrome. （accessed 2020 Jul 11）

https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/premenstrual-dysphoric-disorder-pmdd

野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など