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2019.12.112024.04.01
【産後うつ病】子供のせいで起こる病気ではない点にご注意を
【産後うつ病】子供のせいで起こる病気ではない点にご注意を
赤ちゃんが生まれて、新しい家族との生活も始まった矢先。望んで生んだ赤ちゃんなのに、なぜか辛く感じたり、楽しいと思えない、更には赤ちゃんがかわいいと思えない、愛おしいと思えない、、、。こんなことを考えてしまう、私は何でダメなママなんだろう。こんな思いを誰にも相談できるわけがない、辛くて毎日涙が出てしまう。
このようなエピソードをお持ちの方や、当てはまる方は、もしかしたら産後うつ病の可能性があるかもしれません。ここでは産後うつ病についてご説明をいたします。
産後うつ病は、“出産疲れだろう”とか、“新しい家族が増えた環境の変化だろう”といった表現とはちょっと違うのです
産後のママたちは、気分が落ち込んだり不安になることは実は稀ではないのです。
特に、出産後数日から、気分が落ち込んだり、急に不安が襲ってきてどうしようもなくなってしまい、涙が出てしまうなどの気分の変動が起きやすいと言われております。
また、このような気分の変動は3人に1人のママで起きると言われており、「マタニティーブルー」または「ベビーブルー」と呼ばれているのです。しかし、このような落ち込みは、通常は長く続くことはなく、おおよそ2週間程度で気持ちの不調が自然に収まっていく事が多いのです。
産後うつ病では、このような気分の落ち込みや不安が2週間以上継続してしまっている状態であり、うつ病の一種と言われております。
産後のうつ病は、ママの日常生活への影響だけではなく、赤ちゃんへのお世話や成長にも影響すると言われております。またそういう点で、ママと赤ちゃんの2人の命が関わってしまう非常に重要な疾患ですので、“出産疲れ”、“新しい家族が増えた環境の変化“として表現してしまう状況とは大きく異なるという点には非常に注意が必要なのです。
また、産後うつ病の罹患率は15%と言われており、決して少ない数とは言えません。また、妊産婦の死亡原因としては、出産に伴う死亡数よりも、産後うつ病に関連した死亡数の方が高いとの報告もあります。現在は、産後の検診の回数を増やしたり、産後うつに関する問診やチェック項目の追加等、公的機関や医療機関でも十分に産後うつ病に配慮した取り組みを行っております。その上で、産後うつ病に関する知識や理解は本人だけではなく、家族や周囲の人たちにも求められているのです。
産後うつ病は、子育てに慣れたら治るのでは?と放っておいていいものではありません。
赤ちゃんの成長にも大きく関わってきますし、何よりも、うつ病と同様に死亡原因となりかねない疾患です。大切なお子様と、大切なママへの不調を少しでも早く改善するためにも、もし次の項目に症状が当てはまる部分がありましたら、メンタルクリニックや心療内科への受診と相談をおすすめいたします。
産後うつ病の症状について
産後うつ病の症状の一例
・気分が落ち込んでやる気が出ない
・気分の浮き沈みが激しく、ちょっとしたことでキレてしまったり泣いてしまったりする
・眠る時間を確保してもなかなか眠れない、夜中に目が覚めてしまう
・食欲がわかない、あるいはついつい食べ過ぎて気持ちを紛らわせようとしてしまう
・ずっと疲れていて怠い
・いつもできていた家事が、手につかないくらい体が思う様に動かない
・赤ちゃんのことを可愛いと思えない
・ついつい、赤ちゃんに対して手を出したくなってしまう
・赤ちゃんが大きな病気になったのではないかと心配になる
・赤ちゃんが誰かに取られたり、傷つけられたりしたらどうしようととても不安
・自分はダメな母親と責めたり
・もっといい母親にならなくてはいけないのに自分は慣れないと自信を無くしてしまう
・周囲との会話や関りがとても煩わしく感じてしまう
まだまだ、育児はお母さんの仕事という風潮は強く、日中はずっと赤ちゃんと2人きりといったママも多いのではないでしょうか?そのような環境の中で、赤ちゃんをかわいいと思えない、辛くて育児がしんどいといった感情は、どんどんと膨らみやすくなってしまう事も十分に考えられます。またその一方で、赤ちゃんにとってもお世話を受けないと生きていけないといった状況が、いっそう二人の関係を閉鎖的にしてしまう事もあり、社会との疎外感や孤独といった感情をママは強く感じてしまうのです。
産後うつ病の原因
産後うつ病の原因は、以下の3つと言われています。
① 出産に伴うホルモンバランスの乱れ
卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)は出産時に分泌量が大きく変わります。また出産後の授乳などのカラダへのホルモン変動の影響も大きく、これらのホルモンが脳の神経伝達物質に影響を与え、産後うつ病になりやすくさせると考えられるのです。
② 慢性的な睡眠不足と疲労
生後3か月ぐらいまでは2~3時間周期ごとに授乳しなければなりません。またその間でさえ、休息をとる時間になかなか当てられないことも多いのです。そのため、ママは細切れでしか睡眠時間と休息時間を確保できません。肉体的な疲労は更に精神的な不調を増幅させやすく、心身共に疲れ切ってしまい、産後うつ病になってしまいやすくなると考えられるのです。
③ 「ママ」としての様々なストレス
出産を契機に、それまでの自分とは違う「ママ」というアイデンティティに慣れるには、様々な問題と向き合う必要があります。また、どの月齢・年齢の子どもであっても、育児ストレスは大きいものです。これは、初めてママになる人であっても、2人目の子どものママになる人であっても、心境の変化や感じるストレスの存在には変わりありません。
④ 周囲からのストレスも大きく感じてしまう事も
出産後の赤ちゃんはとても繊細です。日々のお世話を通してママは赤ちゃんに対して一生懸命になります。そのような中で、ペースを乱される行動や、配慮が欠けた言動など、普段以上に敏感にとらえて、ストレスと感じ、傷つき心を閉ざしてしまう事もあるのです。時として、父親や親せき等、身近な存在であっても、この時期にはつらく感じてしまう事があるのです。
産後うつ病は誰にでも起きうること。赤ちゃんへの愛情不足が原因で発症するのではありません
周りの人だけではなくママ自身も誤解してしまうことがあるのですが、赤ちゃんへの愛情不足が産後うつ病の原因となることはありえません。
逆に、産後うつ病の為に、赤ちゃんへ伝える愛情が少なくなってしまったり、お世話が行き届かなくなってしまったりしてしまいます。産後うつ病の病状のせいで、日常生活や赤ちゃんへの成育へも影響をしてしまうのです。
産後うつ病の治療方法について
産後うつ病の治療は薬物療法と、外来通院での精神療法や、再発しないための生活環境の見直しが挙げられます。
(1)薬物療法
特に授乳中のママは薬に対して敏感だと思います。しかし、赤ちゃんにとってママの健康はとても大切で、うつ状態が悪化してしまう方が赤ちゃんや赤ちゃんの成長にとって悪い影響を及ぼしてしまう事もあるのです。抗うつ薬の中にはあまり母乳に移行しないものもあります、また体調に応じては漢方治療などの提案や併用もしておりますので、医師に相談しながら進めましょう。
(2)精神療法
外来通院をとおして、現在のつらい感情やストレス状況を確認しながら、対処の方法や、つらい感情を増幅させすぎてしまう考え方や癖、更には一人で抱え込みやすい方への寄り添いとアドバイスなど、お一人お一人に合わせた各種精神療法を通してご自身のストレスやつらい感情に寄り添い、うつ状態の緩和と改善を目指していきます。また心理士などの専門職と辛い症状を共有することで、安心感を得たり、自分の感情や思いを整理するきっかけともなります。
(3)生活の見直し
「無理をしない」というのが産後うつ病を悪化・再発しないためにもとても大切です。
・家事など、分担をしたり、役割を少しでも軽減してもらう(家族以外のサービスも含めて)
・手を抜くことを実施してみる(完璧である必要はありません)
・赤ちゃんと離れる時間を作る(二人で過ごす時間だけではない時間を作ってみる)
・心おきなく、話せる相手を見つけてみる
実家や夫の援助を得るのが難しい場合には、行政や保育園の行うファミリーサポートなどを利用してみる手もあります。知らない人へ預けるのは心配と思われる方は、まずは赤ちゃんをお母さんとの2人でサポーターの人を利用してみるという考えはいかがでしょうか?
ちょっとした、お願いだけでも手伝ってくれる存在がいるという感覚はお母さんにとってもストレスの軽減にもつながります。
産後うつ病のまとめ
育児はみんな大変、みんな乗り越えてきたとは言うものの、お一人お一人の環境や体調に応じて、しんどさや辛さが異なることは当然です。特に、身体的にも負担がかかっている産後という状況では、普段とは異なる心理・精神状況にもなりやすくなってしまう事は多いと思います。
先輩ママたちの声や、周囲の意見にも様々あり時として振り回されてしまう事もあるかもしれませんが、まずはご自身が“つらい”、“しんどい”と感じた想いが相談のタイミングでもあり、もしかしたら受診のきっかけかもしれません。
お一人で無理をなさりすぎず、「産後うつ病かも」とお悩みの方は心療内科やメンタルクリニックなどの医療機関までご相談くださいませ。
野村紀夫 監修
ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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