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2020.05.292024.04.01

パニック障害は甘えではない!脳が正常に働かなくなっている状態なので治療が必要!

パニック障害は、100人に約1人が一生に一度は経験すると言われています。しかし、パニック障害を「甘えだ」という誤解・偏見も少なくはありませんし、自分で我慢して医療機関への相談をためらってしまっている方もみえるかもしれません。

しかし、パニック障害では脳のいくつかの部分がきちんと働かなくなっていることが、最近の研究で分かってきました。

パニック障害を治療する上で、病気のメカニズムをしっかり理解することは大切です。この記事ではパニック障害の最新脳科学的メカニズムを分かりやすくお話ししたいと思います。

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パニック発作の起源

パニック発作は、進化論的に考えると実は理にかなったものです。

パニック発作を起こしやすい原因のひとつに、二酸化炭素の濃度が上がることが挙げられます。二酸化炭素の濃度が上がるということは相対的に酸素が少なくなるということなので、窒息の危険があるということです。二酸化炭素が高いから窒息を避けようとするのは元々生物に備わった考えです。この考え自体はないと生きていけないため、適応的な側面もあります。しかしパニック障害を患う人の場合は「命を守らなくては!」という危険警報が出してコントロールできなくなり、パニック発作が起きるという不適応的となるのです。

なお、「二酸化炭素の濃度が上がるだけなら、狭い部屋に大勢いるだけでもなるんじゃないか」と思われるかもしれません。確かに、パニック障害が1%の人がなるのに対し、パニック体験自体は50~60%の人に起こる可能性があると言われています。そのため、詳しくは後述しますが、パニック障害の人は二酸化炭素に特に反応しやすい可能性があると考えられています。

パニック障害の原因と症状とは

パニック障害の脳科学的メカニズム

2019年、脳科学的に見たパニック障害のメカニズムモデルが出されました。その説明モデルによると、特に(1)ストレスに関連した感情にかかわって働く扁桃体(へんとうたい)が活動しすぎるのと、(2)行動のコントロールにかかわる前頭前皮質がきちんと働けていないことがパニック障害の原因であるとされています。

以下では、詳しく見ていきます。

①最初にパニック発作が起こるメカニズム

パニック障害の人はそうではない人と比べ、血液中の二酸化炭素を検知する延髄腹側野の中枢化学受容器が敏感に働き過ぎていると言われています。

普通の人にとって少し二酸化炭素が増えているなという状況でも、パニック障害の人は「酸素が足らない!」と命の危険がある状況だと判断します。その結果、酸素を多く取り込もうとして過呼吸を起こしたり、全身に酸素を届けようとして動悸がするのです。これが最初に起こるパニック発作と考えられています。

パニック障害について心療内科のひだまりこころクリニック金山院が解説

②パニック発作を繰り返すメカニズム

脳には色々な役割を持っている細胞がありますが、感情を司る部分に扁桃体というものがあります。扁桃体は特に不安や恐怖といったネガティブな感情が発生するときに活動します。

パニック障害をの人は、扁桃体がすぐに活性化しやすいと言われています。「心臓発作」や「気絶」、他にも「混雑」といったパニック発作と関連する言葉を聞くだけでも、扁桃体がすぐに活性化するほどです。この扁桃体の活性化がパニック発作の繰り返しやすさの原因と考えられています。

また、脳は一つの細胞が単独で働いているのではなく、いくつかの細胞と連結して働きます。

扁桃体の横には、記憶を司る海馬があります。例えば満員電車でパニック発作を起こした人が電車に乗ったら、「以前パニック発作が起きた状況と似た状況にだから危険だ!」ということを海馬は扁桃体に伝えます。過活動しやすい扁桃体はすぐに「生命の危機だ!」と考え、こうして再びパニック発作を起こしてしまうのです。

パニック障害でお困りの方はカウンセリングも行えるひだまりこころクリニック金山院へご相談ください

③パニック発作を起こした場所を回避してしまうメカニズム

動物と人間で一番違う脳の部分は、頭の前のほうにある前頭前皮質という部分です。前頭前皮質は考えたり、何かを作りあげたり、コミュニケーションを取ったりといった複雑な働きを担うところです。その働きのひとつに、「不適切な反応を抑える」という役割があります。例えば、ダイエット中には甘いものを我慢すると思いますが、我慢できるのも前頭前皮質のおかげです。

パニック障害を患った人は、前頭前皮質の「不適切な反応を抑える」という役割が上手く働いていないことが分かっています。「二酸化炭素が増加したから危険!」と扁桃体が出したアラームは本来なら行き過ぎた警報ですが、それが不必要な反応として抑えることができません。

また、海馬からも「以前電車でパニック発作が起きた」という情報が前頭前皮質に危険情報を知らせてきます。正常に脳が働いていたら電車を避けようとしないのですが、パニック障害の人の前頭前皮質は扁桃体や海馬からの行き過ぎた警報を信じてしまい、電車を回避してしまうことになるのです。

心療内科と精神科のひだまりこころクリニック金山院です

まとめ

このように、パニック障害は脳の一部の細胞が働きすぎたり、逆にきちんと働いていなかったりするため生じていると言えます。そのため、パニック障害は甘えによるものではありません。肩が痛かったら整形外科に、耳が痛かったら耳鼻科に行くと思います。専門の科に行かなくては、きちんと治りません。

パニック障害を患う人の50~65%はうつ病を併発しやすいと言われています。早めに専門の心療内科クリニックに相談するようにしましょう。

参考文献:塩入俊樹 (2019). パニック症の神経解剖学的モデルについて 不安症研究, 11, 35-46.

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