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2020.06.222024.04.01
“大人の発達障害とは?”【ASDとADHDの違い・事例編】
ASDとADHDの判断が難しいのはなぜ?
“大人の発達障害とは?”【ASDとADHDの違い】でみてきたように、ASDとADHD は医学的な定義上では区別がなされ、特徴も異なるもののように見えますが、様々な共通する特徴もあり、専門家でも見極めは難しいケースが多くあります。
ここでは、ASDとADHDの違いについて、人物の例を用いて、解説をしております。まずは、会社員Aさん、Bさんの事例から考えてみましょう。
①【ASDとADHDでの「ミスの違い」について】
AさんとBさんは、商談で提出するための書類の作成を上司に頼まれました。
【ADHD傾向のAさん】注意の切り替えが苦手で、うっかりや抜け漏れが多い
Aさんは、サクサクと書類を作成していきます。
8割ほど出来たところで電話がかかってきた後、Aさんは書類の存在を忘れてしまいました。そして最終確認ができないまま、打ち合わせの場に持っていくことになり、ミスが発覚。上司に怒られてしまいました。
【ASD傾向のBさん】臨機応変さに欠け、言われた内容を勘違いしたり、言外の意味が伝わりにくい
Bさんも、書類を作成していきます。
黙々と作業を勧めます。うまく書類ができあがり、打ち合わせの場に持っていきましたがミスが発覚し、上司に怒られてしまいました。
Bさんの勘違いが原因のミスだと分かりました。
ADHD傾向の方が起こしやすいミスと、ASD傾向の方が起こしやすいミスの違いは何だろうか
AさんとBさんはどちらもミスで上司に怒られてしまいました。しかし、その原因は異なっています。ミスが多いというのは確かに ADHD の特徴になります。それは注意の切り替えが上手にいかないため、抜け漏れやうっかりが多いからです。
しかし、ミスは ADHD 特有のものではありません。ASDでもミスは頻繁に起こりえます。たとえば、Bさんのミスの背景には、臨機応変に質問ができず、上司から言われた内容を勘違いしたまま作業をしてしまったことがあります。
つまりミスをしたという表面的な部分だけをみるのではなく、原因と状況を深く考えないと、それが ADHD 的なミスなのか、ASD 的なミスなのかわかりにくいわけです。
②【ASDとADHDの「空気の読めない」という違いについて】
AさんとBさんは、社内の会議に出席しています。
【ADHD傾向のAさん】タイミングが合わず、衝動的な行動をとって「空気の読めない」と言われてしまう
Aさんは、同僚の発表中、内容の中でどうしてもいくつかのポイントが気になってきました。
質疑の時間でもありませんが、Aさんは挙手し、気になる質問を次々と質問します。
「残りは後にしてくれ」と上司が言いました。
【ASD傾向のBさん】場の内容にそぐわない、質問をして「空気の読めない」と言われてしまう
Bさんも、同僚の発表中、どうしてもあることが頭の中をグルグル回っていました。
質疑の時間でもありませんが、Bさんは挙手し、気になる「あること」に関する質問をします。
「それは今、関係ないだろう」と上司が言いました。
ADHD傾向の方とASD傾向の方での「空気の読めない」という違いは何だろうか
AさんもBさんも、「空気が読めない人」と思われてしまった会議での振る舞いです。しかし、その原因は異なっています。Aさんは、気になった質問を質疑の時間までとどめておくことができずに質問してしまったのに対し、Bさんは自分自身の中で気になっていたことを会議の内容にかかわらず質問してしまいました。
空気が読めないというのはASDの典型例と言われます。確かにそうなのですが、ADHD的にも同様な印象を持たれやすい場面が実はあります。
Aさんのように、衝動的な行動で会議の場の進行を大きく妨げてしまったり、また、集団行動をしているのに道の雑踏に気を取られて周囲から「聴いている?ぼーっとして自分の世界にいたよ」等と言われてしまう人は、ADHD的に「空気が読めていない」と考えることができるでしょう。周囲からすると、もう少し全体感を理解してほしいな、自己中心的に見えるな、と思われてしまうのです。
③【ASDとADHDの「こだわりの強さ」という違いについて】
AさんとBさんの休日の様子です。
【ADHD傾向のAさん】注意の切り替えが難しく、次の行動への移行が苦手
Aさんは、スマホの課金ゲームにはまっています。
家族がいくら言っても、課金を止めることが出来ません。
【ASD傾向のBさん】感覚過敏や、ルーチン化された行動化が強い
Bさんは、家でいつも同じ服を着ます。
余りにも着続けるため、薄汚れてしまっているのに、家族がいくら言っても、他の服に着替えようとはしません。
ADHD傾向の方の「こだわりの強さ」とASD傾向の方の「こだわりの強さ」の違いは何だろうか
このケースのAさんとBさんは、どちらも「こだわりの強さ」のように見えます。
Aさんのケースは、ADHD傾向の「注意の切り替えの難しさ」を示す例といえるでしょう。本当にそのゲームが好きで、自分の損得がわからずはまっている「ゲームへのこだわり」に見えますが、むしろ何か始めてしまうと切り替えが難しく次の行動や考えに移りにくい、という性質によるものとが考えられます。
一方、BさんのようなASD的なこだわりは、肌触りを気にすることの他にもパソコンを片付ける時にマウスの置き方にこだわって誰かが触ると不快感を強く示す、などがあります。
このAさんの「注意の切り替えの難しさ」とBさんの「こだわり」は混同されることが多いのが実際です。
ただし専門家ではないと、このようにこだわっているのか、それとも単に切り替えが苦手なのかも、取り違えられてしまう可能性があります。
見極めたいとき、症状でお困りの方、自己判断なさらず当院にご相談ください
以上みてきたように、ASDとADHDは定義上の違いにそって区別することは簡単ではありません。ASDであるか、あるいは、ADHDであるかを無料で診断できるようなサイトもありますが、正しく診断できるとは限らないという点は忘れてはならないでしょう。あくまで参考程度にとどめるべきと言えるでしょう。
「もしかしたら・・・」と大人の発達障害(ASD・ADHD)を疑ったら、クリニックや病院にて検査を併用して、医師から診断を受けることが出来ます。当院では、ADHDの検査としてWAISやWISCといった詳細な心理検査をもとに、ASDやADHDの診断と傾向の確認を行っております。「チェック項目などの簡易検査は行ったけど、しっかりと発達障害、ASD、ADHDの診断をしたい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談くださいませ。
治療という意味だけでなく、まずはご自分の特性を知ってみるということも大切です。
引用・参考文献
American Psychiatric Association: Diagnostic and statistical manual of mental disorders, 5th ed., Washington, DC, 2013 (高橋三郎,大野 裕監訳,染矢俊幸,神庭重信,尾崎紀夫,三村 將,村井俊哉訳:DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.東京,医学書院,2014).
Wing, L., 1998,『自閉症スペクトラム―親と専門家 のためのガイドブック』東京書籍.
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