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2019.06.192024.04.01
抗うつ薬と体重増加、糖尿病との関連
抗うつ薬と体重増加、糖尿病との関連
うつ病の患者さんには女性が多いことから、抗うつ薬の副作用として体重増加や肥満を気にされる方は少なくありません。患者さんとしては見た目の問題で体重増加を気にすることが多いですが、専門医としては肥満からさらに糖尿病へ発展しないかが気にかかることだと思います。
この記事では、抗うつ薬と体重増加、糖尿病との関連について説明します。
抗うつ薬がグルコース恒常性と体重に及ぼす影響
抗うつ薬がグルコース恒常性と体重に及ぼす影響については、以下のように薬によって異なります。
SSRI
2型糖尿病患者に対してインスリン必要量を減少させるなど、好ましい効果を持つ。特に、fluoxetineはHbA1cの改善や体重減少と関連があると言われている。また、エスシタロプラムも血糖コントロールの改善に役立つと考えられている。とはいえ、SSRIの長期使用については、糖尿病のリスクを少しとはいえ増加させるというエビデンスも存在する点には注意が必要。
SNRI
SNRIは体重にほとんど影響を及ぼさないと考えられている。
三環系抗うつ薬
三環系抗うつ薬は食欲増進や体重増加、高血糖などの糖尿病リスクと関連する。
MAOI
不可逆的MAOIは重度の低血糖エピソードや体重増加と関連している。
ミルタザピン
糖尿病ではないうつ病患者では、ミルタザピンは耐糖能を障害しないと考えられている。また、短期投与の場合ではHbA1cが改善したが、1年後の追跡調査によると悪化した。
agomelatine
agomelatineの体重への影響は極めて小さいことが明らかにされている。そのためagomelatineは期待できるが、2020年の段階では研究データが限られている。
このように抗うつ薬の中では特にSSRIで体重やHbA1cを減らすというエビデンスが積み重ねられています。そのため、グルコース恒常性と体重増加に及ぼす影響の観点からも、SSRIがうつ病治療の第一選択薬として推奨されます。特にセルトラリンやエスシタロプラム、fluoxetineなどが支持されています。反対に三環系抗うつ薬やMAOIについては、体重増加の関連性が指摘をされていますので注意が必要です。
うつ病と糖尿病
抗うつ薬と糖尿病の関連以前の問題として、そもそも糖尿病とうつ病との間には強い関連があります。スクリーニング方法によって異なるとはいえ、糖尿病患者における抑うつ症状の合併率は9~60%と高いです。しかも、うつ病になると代謝が悪くなり、さらに代謝が悪くなるとうつ病が悪化するというように、うつ病と糖尿病は相互に悪化させる恐れがあります。他にも、抗うつ薬が処方されると、糖尿病薬のアドヒアランスが低下する可能性があることが分かっています。よって、うつ病と糖尿病の治療を考える上では、抗うつ薬が代謝調節へ及ぼす影響をしっかりと考えなければなりません。
患者さんが糖尿病を患っているか否かに関係なく、うつ病患者さんでは糖尿病スクリーニングを行うことが推奨されています。抗うつ薬の投与開始時の血液検査や、容量変更時などの薬物療法中の定期的な血液検査、薬物療法中止後の血液検査では肝機能や腎機能だけではなく、HbA1cや血糖値のチェックもしっかり行いましょう。
体重増加や糖尿病を防ぐには…
SSRIでは体重やHbA1cの減少と関連するというエビデンスがありますが、うつ病の薬物療法中に太ってしまったという患者さんは決して少なくありません。うつ病の治療効果として食欲がわいたり、自宅療養の間に筋肉が減って代謝が落ちてしまうなどのためです。体重増加を防ぐ手段として抗うつ薬を減らすなどもひとつですが、他にも以下の方法があります。
①体重を測る
患者さんの体に一番負担が少ない方法は、体重測定です。ヘルステックベンチャー株式会社FiNC Technologiesがコロナ禍におけるダイエットの実態調査を行ったところ、太っていない人や体重に変化がなかった人が最も行っていたのが、体重測定でした。日々のちょっとした意識が食べ過ぎへの注意を高めると思われます。
②運動する
うつ病の症状が軽くなり、日常生活を問題なく送れるようになった患者さんには、運動がおすすめです。運動すること自体が消費カロリーを促すというメリットもありますが、運動することで疲れて夜ぐっすり眠れるという効果もあります。セロトニンの分泌効果を高める点からも、ウォーキングやスクワットのようにリズム性のある運動が特におすすめです。
まとめ
うつ病治療の第一選択薬のSSRIは体重やHbA1cを減らすというエビデンスもあるとはいえ、うつ病と糖尿病との間には強い関連があります。そのため、定期的な血液検査による糖尿病スクリーニングは欠かせません。
またうつ病の患者さんには女性が多いことから、健康上の問題と同時に見た目や自尊心の問題として太ることを気にする患者さんは少なくないと思います。患者さんの治療状態に合わせて、適切な体重コントロール方法のアドバイスが必要になるでしょう。
モーズレイ処方ガイドライン以外の引用文献:株式会社 FiNC Technologies (2020). FiNC 総研 コロナ禍におけるダイエット実態調査を公開 FiNC アプリユーザーの約半数が太った・体重が増加したと回答〜コロナにおける今夏のダイエットニーズを徹底分析 Retrived from https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000213.000027329.html(2020年12月22日)
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