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2019.02.232024.04.01
持続性抑うつ障害について
持続性抑うつ障害
持続性抑うつ障害とは、うつ病よりも軽い抑うつ状態が2年以上続く疾患のことです。子どもや青年期のクライアントはその期間が1年以上続きます。
これまでは気分変調症と呼ばれていましたが、精神疾患の診断・統計マニュアルの改訂版「DSM-5」の中で基準が見直されたため、持続性抑うつ障害に名称が変更されました。発症時期は小児期の早い段階から、青年期、成人の早期に及び、誰にでも発症する可能性がある疾病です。
持続性抑うつ障害の症状
自分の価値観や自己評価も変えてしまう
抑うつ状態が長期にわたって訪れます。「自分なんて無価値だ」と否定したり、「人生は苦しいだけ」といった歪んだ考えを持つようになる方もいるでしょう。持続性抑うつ障害は、うつ病に比べると主観的な症状が顕著です。やる気の減退、自尊心の喪失、意欲や集中力の低下、イライラなどが起こり、自己否定感が低くなるため、自分自身を認めることができません。気分の落ち込みにより、人間関係をうまく築けないことで周囲から孤立し、自分を責めてしまう方もいます。
何をしても楽しめず、ほぼ1日中、気分の下がった状態が続き、喜びや感動を味わえないため悲観的になりがちです。不眠や過眠、食欲の変化、ダルさを感じたりと身体的な影響も起こります。常に憂鬱な気分が続くため、自己否定をしたり、自分が不幸であると思い込んでしまったり、心身がすり減っていくのも避けられません。症状により、社会生活に影響が出るため人との交流を遮断してしまうこともあるでしょう。小児期や青年期に発症し、症状が悪化して慢性化するケースもあります。
持続性抑うつ障害の特徴
慢性的にうつ状態に陥るため、症状がある状態を受け入れるようになってしまいます。症状が長期化しやすいことで、周囲からも性格として捉えられやすく、生きづらさを感じるクライアントも少なくありません。症状が誤解されやすいので、本人ですら勘違いしてしまいますが、惰性ではなく病気であることを正く認識することが大切です。
持続性抑うつ障害は軽度の「抑うつ」状態になるため、うつ病に比べると比較的軽度ですが、症状が継続して現れます。いつから気分の落ち込みが始まったのかが分からず、知らないうちに症状が悪化し、それが何年も続いているというクライアントも多いでしょう。うつ病のような症状の段階まで進む場合もありますが、通常は段々と落ち着き持続性抑うつ障害の症状に戻るような経過をたどります。
本人の努力で解決する問題ではないため、家族や周囲の理解は不可欠です。持続性抑うつ障害は、不安症や境界性パーソナリティー障害と合併しやすい性質を持っており、うつ病や双極Ⅰ型障害へも移行する場合もあります。発見疲れや落ち込みを感じながらも、日常生活を送れるため、症状を問題視せずに見過ごされることもあり注意が必要です。
持続性抑うつ障害の診断基準
DSM-5で定められている診断基準です。
A. 主観的、客観的に関わらず、抑うつ状態が1日中存在し、2年以上にわたって毎日のように続いている。(クライアントが未成年の場合、発症期間の基準は1年)
B.抑うつ状態の期間に、以下に挙げた症状が最低でも2つ見られる。
抑うつの間、以下のうち2つ(またはそれ以上)が存在すること。
- 1.食欲の減退/増加
- 2.不眠/過眠
- 3.気力の減退/疲労感
- 4.自尊心の低下
- 5.集中力の低下/決断の困難
- 6.絶望感
C.基準のAとBの症状が見られない状態が2ヶ月以上継続しない。またその期間が2年を超えている。
D.症状が現れる2年の間に、うつ病と診断される基準も満たしている可能性があること。
E.躁病エピソードや軽躁病、気分循環症性障害の基準を満たしたことがなく、これらには該当しない。
F.症状の原因が、他の疾病や精神疾患では説明できない。
G.現れる症状は、薬物の投与や、その他の外的要因によって引き起こされたものではない。
H.症状によって苦痛に襲われたり、日常生活や社会生活に影響を及ぼしている。
(参考:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 医学書院,American Psychiatric Association,監修 日本精神神経学会, 監訳 高橋 三郎/大野 裕)
持続性抑うつ障害の原因
持続性抑うつ障害が起こる原因は、セロトニンやノルアドレナリンなど神経伝達物質の分泌異常であると考えられています。また持続性抑うつ障害の発症に関係しているリスク因子は以下の3つです。
気質
社会生活を営む上で、否定的な態度を取ってしまう、周囲との関係がうまく築けないなどの問題を抱えたクライアントは症状が長期間続く可能性が高くなります。
環境
小児期に親を失ったり、離別したり、といった大きなストレスを感じると発症のリスクが高まります。そのため発症の恐れのある子どもに注意を向けて、早い段階でのストレス緩和や、ケアを行うことで持続性抑うつ障害の予防に繋がるでしょう。
遺伝
発症の可能性が高くなる因子として、うつ病を持つ第1度親族のいることが挙げられます。
持続性抑うつ障害の治療方法
自分の存在や人生観に対して歪んだ認識を持ちやすいため、精神療法(心理療法)により、そのような考えに至る癖や認識を修正することが必要です。治療には行動療法や認知療法、対人関係療法などの精神療法と共に、薬物療法を用いる併用療法がより有効であることが研究で明らかになっています。
持続性抑うつ障害に有効である対人関係療法は、他者との関係にフォーカスする治療法です。全ての人間関係ではなく、両親や配偶者、パートナー、親友などのクライアントにとって「重要な他者」に注目します。その相手との関わりについてどのような問題があるか、感情や症状との関係などを理解し、解決に繋げるというやり方です。距離の近い相手との関係が良くなると、気持ちの安定にも繋がります。
症状を性格であると誤解されやすい持続性抑うつ障害の場合にも効果的です。クライアントは症状が性格ではなく病気であることを認識でき、自分の責任ではないと分かるため、肯定的な姿勢で治療を行えるようになるでしょう。
薬物療法においてクライアントは、SSRIやSNRIなどの抗うつ薬を処方されることになります。通常、薬物療法を開始してから数週間で症状が良くなり始め、数ヶ月経つとさらに効き目が現れるようにな流でしょう。また持続性抑うつ障害には、認知行動分析システム精神療法(CBASP)が効果を発揮することも分かっており、これらを組み合わせた治療が行われます。
まとめ
2年以上も憂鬱な気持ちが続いているなんて、精神的にも身体的にも辛く大変な負担ですよね。持続性抑うつ障害を発症すると、自己否定や悲観的な考えに支配され、社会的引きこもりになるケースも珍しくありません。自己否定や、意欲の減退、絶望感なども、努力でなくせるものではなく、症状のひとつとして現れてしまいます。
けれど、それらが病気のせいではなく、「甘えているだけ」と性格の問題にされてしまうこともあり、診断されるまでの間に自分を責め続けてしまう方も多いのが現実です。そのため、少しでも病気について正しい知識を持つことがクライアント自身も、周囲にとってもプラスに働きますよ。
治療によって無力感や人生に対する後ろ向きな気持ちも減っていくはずです。もし今気力や希望がないのは、病気の症状のせいかもしれません。少しでも気になることがあれば専門医に相談してみましょう。
参考文献
精神疾患・メンタルヘルスガイドブック DSM-5®︎から生活方針まで 医学書院,American Psychiatric Association,訳 滝沢龍,2016
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 医学書院,American Psychiatric Association,監修 日本精神神経学会, 監訳 高橋 三郎/大野 裕,2014
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