クリニックブログ
2020.04.042022.05.24
社交不安障害が続く原因は「自己注目」と「認知の歪み」!
人前で何かすると不安になったり、顔が真っ赤になる、冷や汗がダラダラ出るといった症状を伴う社交不安障害。社交不安障害の強い不安はなぜ起こるのでしょう?
原因不明の病気というわけではなく、メカニズムがあることが分かれば、少しは恐怖感も和らぐと思います。この記事では社交不安障害の不安がなぜ起こるかや、どうして不安が続くのかについてお話しします。
社交不安障害の不安はなぜ起こるの?
人前で何かすること自体は、本来なら怖いことではありません。小学校低学年の子どもぐらいなら授業参観日で元気よく手を上げることも多いでしょう。でも、中学生や高校生ぐらいになると、自分から手を挙げて発表することは稀だと思います。これはなぜでしょうか。
人前で何かすることへの不安は、パブロフの犬と同じように形成される
「パブロフの犬」という話を聞いたことがありますか。これはロシアの生理学者パブロフ博士が発見したエピソードのお話です。パブロフ博士は、犬の唾液腺の分泌反応を調べていました。
でも、エサを出すときにベルの音を流していたら、犬はベルの音が聞こえただけで唾液を流すようになったのです。これは、ベルの音=エサの合図というのを犬は学んだから起きたのだと考えられました。
人前で何かするときの不安も同じです。
人前で発表したときに失敗して笑われたり、上手く答えられなかったことが嫌な経験となります。そのことが、人前で何かすることでのドキドキとした不安と結びついてしまうのです。
人前で何かすることへの不安はなぜ続いてしまうの?
人前で何かすることが不安になってしまうと、それがなかなか治りません。それは不安になってしまった後に取ってしまう行動が原因となっていることが往々にあります。
例えば、自分が発表する番が近づいたときに、先生に首を振ったとします。そうすると発表しなくて済むので、ホッとして不安や緊張が和らぐでしょう。でも、「発表を辞める」=不安を和らげる行動となってしまうので、不安になったら逃げるしかなくなってしまう様になってしまうのです。
本来ならちゃんと発表する、あるいは「分からない」ときちんと口に出し、発表が上手くできなくても何も問題ない(あるいは笑われても平気)だと納得できればよいです。
しかし、特に思春期で自意識過剰になりがちな時期、さらには、人の評価を気にすることに対する意識が高まる年代には、それは難しいです。
社交不安障害が続くキーワードは「自己注目」と「認知のゆがみ」
先ほど、他の人から笑われても題ないと納得できればよいとお話ししました。
これは専門的にはエクスポージャー(暴露)法と呼ばれる治療法ですが、他の不安障害と比べると社交不安障害の場合には効果が弱いです。この点から、社交不安障害が続くキーワードとして、「自己注目」と「認知の歪み」が注目されています。
自己注目とは?
自己注目とは、自分に注意が向くことです。
心臓のドキドキする感覚とか、汗をかいた感覚、手の震えなどに社交不安障害の人は注意が特に向いてしまい、その他のことにはあまり注意が向きません。
そのため、実際には話している人が興味深く自分の話を聞いてくれていたとしても、自分のドキドキや冷や汗しか覚えることができません。「やっぱり自分は人前だと上手くできない」という結果しか残らず、人前で何かすることへの不安をずっと抱き続けることになるのです。
認知がどんなふうに歪んでいるの?
全く身動きせずに人の話を聞くという人はいないでしょう。
どんな人だって人の話を聞いているときには、たまに足を組みなおしたり、頭を掻いたり、少し別のほうを見たり…。そんなふうなこともするでしょう。それらは特に意図のない行動です。
でも、社交不安障害の人の場合、「自分の話が面白くないから別のほうを見た」など、ネガティブに捉えやすいです。相手が普通に接していたとしても、社交不安障害の人にとってはネガティブな事態なので、人と接することへの不安はなかなか消えないのです。
「自己注目」や「認知のゆがみ」の問題をどうやったら解決できるの?
社交不安障害を続かせる原因や、考え方のクセ、が分かったのなら、それをどうにかすれば多少は社交不安障害の症状を和らげることができます。
例えば、自分のことに注意が向きやすいのなら、相手が着ている服装などに意識を向けるようにしてみるのもよいです。他にも心理学の実験からは、部屋の中に音が出る時計やアラームなどをいくつか置いておき、音が鳴るたびにそちらに注意を向けるというのも、注意の切り替え機能を高めるのに役立つと言われています。
ただし、これらはあくまでも気休め程度です。社交不安障害をしっかり治すのなら、クリニックを受診して自分の場合に合わせた治療方法を受けるのがベストです。
まとめ
社交不安障害の人は自分に注意が向きやすいため、相手の反応をネガティブに受け止めてしまい、人前で何かすることへの不安が続いてしまいます。
原因が分かったら落ち着いて対処法を考えることもできますが、自分一人で考えたり調べるのには限界がありますし、つらい症状を一人で抱え込んでしまうきっかけにもなってしまいます。
社交不安障害は10代から20代の発症が多いと言われており、意外と学生の時期から悩みを持たれている方も多いのが特徴です。もし症状でお困りでしたら、クリニックへの受診がおすすめです。
- 野村紀夫 監修
- ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
- 保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
- 所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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