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2022.06.272022.12.27

パニック症あるいはパニック障害~発展と経過・鑑別診断~

パニック症あるいはパニック障害~発展と経過・鑑別診断~

パニック発作は恐怖を強烈に感じやすい症状です。しばらくすると治まるとはいえ、その時間はとても長く感じるほど、パニック発作は死ぬほどの恐怖を感じさせるので患者さんのQOLを著しく損ないます。的確な治療を行ううえで、パニック症の知識は欠かせません。

DSM5におけるパニック症/パニック障害の発展と経過、危険要因と予後要因、鑑別診断などについて詳細に説明します。

パニック症/パニック障害の発展と経過

特に20代の若い人はパニック症を発症しやすいです。とはいえ稀なことですが、子どもや45歳以上の中高年でもパニック症を発症することはあります。

青年の患者さんは成人と比べ、たとえ医師相手でもパニック発作について正直には話にくいこともあります。青年の患者さんが強い恐怖や苦痛のエピソードを話す場合、予期されないパニック発作の可能性はないか注意深く尋ねましょう。また、中高年の患者さんは後から振り返ってパニック発作に何らかの理由付けをする傾向にあります。そのため、パニック発作の診断の根拠となる「予期されない発作である」かを見落としやすくなります。パニック発作が生じる状況になる前から「パニック発作が起きそうな気がする」と患者さんが思っていたか、確認することが大切になります。

特に治療を受けていない場合、パニック症は増悪と軽快、時には寛解を行きつ戻りつしながら慢性に経過することが多いです。その間、不安症群や抑うつ障害など他の精神疾患を多くの患者さんが併発します。

パニック障害の頻度や症状について解説を行っています

パニック症/パニック障害の危険要因と予後要因

パニック症のリスクファクターとして、以下があります。

気質要因

・神経症的傾向(不安や緊張、怒りなどのネガティブな感情を抱きやすい性格)
・不安への過敏さ(不安は良くないものであると思いこむことに繋がるもの)
・「恐怖の期間(パニック発作の診断基準を満たさない症状数の発作が起きた経験)」の既往

環境要因

・子どもの頃の身体的虐待や性的虐待
・喫煙
・ストレス
 ※ほとんどの患者さんに、最初のパニック発作が起きる数か月前に特定できるストレス因がある

遺伝要因と生理学的要因

・遺伝
※不安症群、抑うつ障害群、双極性障害群を親が患っている場合、子どもがパニック症を患うリスクは高い
・喘息のような呼吸器の障害
※喘息とパニック症は既往歴や併存症、家族歴に関係性がある

パニック症/パニック障害の文化による違い

日本人は周りの人から浮いてしまうことを気にしやすいように、不安には文化による違いがあります。パニック症も同様です。例えば、強い風が吹いている中で歩いていてパニック発作が起きた場合、ほとんどの日本人はいきなりパニック発作が起きたと考えるでしょう。しかし、ベトナム文化で暮らしている人の場合、「風にあたった」からパニック発作が起きたと考えやすいです。これは、予期されるパニック発作に分類されます。

また、パニック発作の症状の中には文化特有のものもあります。一例として、首の痛みや耳鳴り、頭痛、叫んだり号泣したりしてしまうことが挙げられます。こういった文化特有の症状はパニック発作を診断するための症状には数えられません。

パニック症/パニック障害の機能的結果

パニック発作はいつ起こるか分からないため、患者さんは外出することもままなりなくなります。症状のために受診することもあるので、仕事や学校をたびたび休むこともあるでしょう。ほかにも、パニック発作をどうにか抑えようとして処方薬やアルコールを過剰に摂取したり、厳しい食事制限をしたりすることもあります。その結果、対人関係や仕事への悪影響、身体的能力の低下、経済損失といった様々な問題が引き起こされます。

パニック症/パニック障害の併存症

パニック症と併存する身体疾患や精神疾患は数多くあります。特に、他の不安症群やうつ病、双極性障害、アルコール使用障害を患っている場合、パニック障害の罹病率は高いです。他の精神疾患の後でパニック症を発症した場合、パニック症は併存疾患の重症度のマーカーと見なされることもあります。

パニック症/パニック障害の鑑別診断

パニック症と鑑別すべき疾患として、以下があります。

他の特定される不安症または特定不能の不安症

パニック症は、「身体的症状や認知的症状が4つ以上あり」「予期されない」パニック発作が起きるときに診断が下されます。症状限定性(身体的症状や認知的症状が3つ以下)の予期されないパニック発作の場合は、他の特定される不安症または特定不能の不安症を考えるべきです。

他の医学的疾患による不安症や、物質・医薬品誘発性不安症

他の医学的疾患や物質・医薬品の直接的な生理学的結果としてパニック発作が生じている場合は、パニック症とは診断されません。ただし、物質や医薬品の中毒や離脱効果がなくなってからさらに長時間経過してもパニック発作が生じる場合は、パニック症の診断も考慮しましょう。

45歳以上の発症や、パニック発作に否定型的な症状(めまい、健忘、ろれつが回らないなど)などの特徴が見られる場合、他の医学的疾患や物質がパニック発作の原因となっている可能性があります。

パニック発作を関連する特徴として伴う他の精神疾患

前編の通り、特定のきっかけに対してのみ生じるパニック発作は、他の不安症群の症状のひとつと見なされます。とはいえ、きっかけのない予期されないパニック発作も同様に起きていて、さらにその発作について絶えず悩み、行動を変える場合はパニック症も追加診断されます。

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