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抗うつ薬中断症候群～概要や診断的特徴、鑑別診断～

2022.03.272022.12.27

抗うつ薬中断症候群～概要や診断的特徴、鑑別診断～

例えば風邪の場合、症状がなくなればすぐに風邪薬を服用しなくなります。しかしうつ病の場合、症状が落ち着いたからといって抗うつ薬の服用をいきなり止めたりはしません。抗うつ薬の服用を突然中止することで、抗うつ薬中断症候群が引き起こされることがあるためです。

この記事では、DSM5における抗うつ薬中断症候群の概要や診断的特徴、鑑別診断などについて詳細に説明します。

抗うつ薬中断症候群の概要

抗うつ薬中断症候群とは、抗うつ薬の服用を突然止めたり、薬の量を減らしたりすることによって生じる様々な症状のことです。名前の通り、この症候群の原因はあくまでも抗うつ薬の中断や減量です。うつ病薬物治療の増強療法として用いられていた精神刺激薬の中止によって引き起こされた症状については、精神刺激薬離脱と見なすほうが適切と言えます。

抗うつ薬中断症候群で見られる症状は患者さんによって異なります。多くの場合、最後に抗うつ薬を服用した日から2～4日以内に以下のような症状が見られます。なお、抗うつ薬中断症候群とは別に、元々のうつ病の症状が再発する可能性もあることには注意しなければなりません。

・光が点滅している感じがする
・頭の中に電気ショックが走ったような感覚がある
・吐き気
・光や音に敏感になる
・めまい
・耳鳴り
・不安や恐怖
・不眠

抗うつ薬は少なくとも1ヶ月以上の単位で長期間服用するものです。脳や体にとってあるのが当たり前のようになっていた抗うつ薬がいきなりなくなるため、一時的にバランスが崩れて症状が出てきます。抗うつ薬がない状態が当たり前のものとして脳や体がリセットされることで、症状は出なくなります。とはいえ、抗うつ薬離脱症候群の症状にどうしても患者さんが耐えられないこともあります。その場合は、中止した抗うつ薬を再び服用したり、中止した抗うつ薬と同じ作用機序で働く別の抗うつ薬を服用したりすることで、抗うつ薬中断症候群の症状を軽減することが可能です。

抗うつ薬中断症候群についてあま市の心療内科,精神科,メンタルクリニックが解説を行っています

抗うつ薬中断症候群の診断的特徴

当然のことですが、抗うつ薬中断症候群と診断されるには以下の条件を満たしていなければなりません。

・抗うつ薬の服用中止あるいは減量以前は当該の症状が見られなかった
・物質中毒や物質離脱、身体症状症などの他の精神疾患では症状が上手く説明されない
・それまでの治療に関連して生じた気分変動の結果ではない
　（例）抗うつ薬による薬物療法を中断する前に軽躁状態や多幸症などが起きていない

アルコールやオピオイドなどの物質乱用による離脱症状とは異なり、概要でも説明した通り、抗うつ薬中断症候群の症状は様々です。また、抗うつ薬の服用を中止した全ての患者さんでこの症候群が見られるわけではありません。元々服用していた抗うつ薬の量や、その薬の半減期、減量スピード、受容体への結合親和性、患者さんの医薬品代謝速度など様々なものに影響されます。とはいえ、特に短時間作用型の抗うつ薬を急に中止するほうが緩やかな減量よりも抗うつ薬中断症候群を引き起こすリスクが高いです。SSRIのひとつであるパロキセチンは短時間作用型の抗うつ薬であるため、特に抗うつ薬中断症候群を引き起こしやすいと言われています。