クリニックブログ
2022.09.272022.12.27
全般不安症/全般性不安障害~診断基準・診断的特徴~
全般不安症/全般性不安障害~診断基準・診断的特徴~
うつ病における抑うつ気分のように、全般不安症における不安はいわゆる健康な人と病気の人との間の連続線上にあるものです。全般不安症を診断するうえで、全般不安症による不安と病的ではない不安はどのように違うのかを知っておくことは大切なことです。
DSM5における全般不安症/全般性不安障害の診断基準や診断的特徴、機能的結果、有病率について、この記事では詳細に説明します。
全般不安症の診断基準
全般不安症の診断基準は以下の通りです。
A 様々な出来事や活動について過剰に不安になったり、心配したりする。かつ、6ヶ月以上の期間において不安や心配が起きる日のほうが起きない日よりも多い
B 患者さんは、心配や不安を抑えることが困難であると感じている
C 以下の症状のうち3つ以上が不安や心配に伴って生じる
※子どもの患者さんを診断する場合は少なくとも1つの症状があればよい
(1)落ち着きのなさ、あるいは神経の高ぶりや緊張感
(2)疲れやすい
(3)集中できない、
(4)易怒性(怒りやすい)
(5)筋肉の緊張
(6)睡眠障害(入眠困難、睡眠の維持の困難、眠れたとしても熟睡感がないなど)
D その症状(不安や心配、身体症状など)は、臨床的に意味のある苦痛や、勉学や仕事、家事などの大切な領域における機能障害をもたらしている
E その障害は薬物や医薬品、他の医学的疾患の生理学的作用によって生じたものではない
F その障害は他の精神疾患では上手く説明できない
(例)パニック症、社交不安症、強迫症、分離不安症、心的外傷後ストレス障害、神経性やせ症(いわゆる拒食症)、身体症状症、醜形恐怖症、病気不安症、統合失調症または妄想性障害における妄想的信念の内容に関する不安や心配など
全般不安症の診断的特徴
全般不安症とは、様々な出来事や活動について過剰に不安になったり心配したりするという精神疾患です。全般不安症の患者さんが不安を抱く対象は様々です。仕事・学業・家事や健康、子どものことだけではなく、家の用事や待ち合わせへの遅刻といったささいなことにも不安を抱きます。誰でも不安を感じる日もありますが、全般不安症の患者さんの場合はほぼ毎日のように不安を感じています。
不安になること自体は誰にでも起こり得ることです。全般性不安症による不安と病的ではない不安を鑑別するうえでのポイントとして、以下の3点が挙げられます。
(1)日常生活を阻害する程度
診断基準Aの通り、全般不安症の不安は「過剰」なものとされています。不安が過剰なものであるかを判断するにあたり、患者さんの日常生活がどのくらい阻害されているか尋ねるとよいでしょう。例えば、病的ではない不安であれば抑えることができるため、他にすべきことを優先することができます。一方、全般不安症の不安はコントロールできないほどのものです。不安が頭の中に残り続けるため、効率的に考えたり作業したりすることができず、日常生活に支障を来します。
(2)範囲や持続時間
全般不安症の不安は、仕事や家計、自分や家族の健康、子どもたちの安全といったように範囲が広いことが多いです。またその心配の持続時間は、実際に何らかの問題が生じる可能性や、問題の深刻度と比べると、釣り合わないほど長いです。
(3)身体症状の有無
一般的に、病的ではない不安では身体症状をあまり伴いません。一方、全般不安症では診断基準Cに記載されているように身体症状も伴うことが多いです。筋肉が緊張することによる手の震え、肩こりや首こりなどもよく見られます。他にも、過敏性腸症候群や頭痛などのストレスと関連しやすい身体症状も伴いやすいです。
全般不安症の機能的結果
全般不安症の患者さんはほぼ毎日のように不安を抱えています。不安は抑え込まれず頭の隅でずっと考えられているため、本来しなければならない仕事や学業、家事などを効率的に行うことができなくなります。また、不安に伴う身体症状もこのような機能障害を助長します。
全般不安症は育児にも支障をもたらす恐れがある点は注目すべきことです。全般不安症の患者さんは子どものことも不安になってしまい、つい干渉してしまいます。また、子どもに自信を持たせるよう励ましたり見守ったりすることが困難です。
全般不安症の有病率
成人における12ヶ月有病率はおよそ3%です。全般不安症の発症年齢の中央値が30歳であることが示すように、他の不安症群と比べて患者さんの年齢が高く、有病率は中年期でピークに達します。そのため、子どもや高齢者の患者さんは稀であると言えるでしょう。
男女比は1:2で、女性のほうが全般不安症を患いやすいです。
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